日本の半導体市場が8カ月連続マイナス成長している理由
2026年3月15日 14:45

世界半導体市場は絶好調だ。にもかかわらず日本の半導体市場は8カ月連続前年比マイナス成長を続けている(図1)。この原因は何か。結論を先に言おう。日本では半導体顧客が減り続けているからだ。

 

世界半導体市場と日本.png

1 世界の半導体市場と日本の半導体市場 出典:WSTSのデータを筆者がグラフ化

 

世界の半導体市場の内、AIデータセンター市場が膨張し続けている。データセンターの工事を行うSchneider Electricによれば、「以前はデータセンターの新設工場の最初の打ち合わせでは、重いコンピュータラックを支えるための土台や補強台の調達の話から始まった。最近ではどれだけのGPUの数量をいつまでに調達できるか、というテーマから始まる」という。AIチップのGPUの取り合いが始まっているのだ。

だからNvidiaのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は「AI需要が旺盛で今の2倍は製造して欲しい」とTSMCへ要望する。TSMCもこれに応えるため、台湾内だけではなくアリゾナ工場がもう手一杯なため、熊本のJASM第二工場をAI半導体である「Rubin」の生産量を増やそうとして3nmプロセスに変更する旨を29日に高市早苗首相に伝えた。首相は経済安全保障上、心強いと述べていたが、、3nmプロセスは従来の12nm/6nmよりも投資額が増えるという意味である。TSMCC.C.Wei CEOがわざわざ日本に来たのは、日本政府による投資額を増やしてほしいと願い出るためだった。

 

半導体市場はユーザーがICを受け取る場所

 

しかし、日本の半導体市場での売上額はAIデータセンター需要の高まりとは関係なく、20256月から20261月まで8カ月連続マイナス成長を行進している。このギャップが何かを知るため世界の半導体市場の定義を振り返ると、WSTS(世界半導体市場統計)における市場とは、半導体企業が第三者に渡す場所、と定義している。つまり半導体を使うユーザーが日本からいなくなっているともいえる。

半導体をけん引するドライバはかつて総合電機だったが、今はITやデジタル技術に代わった。もはや総合電機企業はあてにならない。ではITはどうか。パソコンやスマートフォンは今でも半導体の最大のユーザーではあるが、日本は世界と闘えないほど弱い。ITハードウエアの世界市場シェアはわずか2.5%しかない。つまり半導体を使うITハードの企業が日本にはほとんどなくなった。この惨状は半導体よりもひどい。半導体における日本企業のシェアは8.2%まで落ちたが、それでもITの比ではない。

ITやデジタル技術の3大要素は、コンピュータ、通信ネットワーク、そして半導体である、今やこれらのどれが欠けても優れたITシステムを作ることができない。コンピュータや通信と同じレベルに半導体がシステムに欠かせない技術となった。

 

ITも半導体も見下してきたニッポン

 

なぜここまで日本はひどくなったか。原因の一つは、家電やインフラ出身者がトップを占める総合電機がいまだにITも半導体産業も下に見続けてきたことによる。かつての半導体は確かに部品だった。例えば大型コンピュータにはCPUボードが使われていた。CPU回路を基板ボード上に標準ロジックや低集積のメモリなどで構成していた。つまり、コンピュータの心臓部を半導体部品で構成していた。総合電機は家電にしろ、インフラ部門にしろ、半導体という部品を使って自らのシステムを組み込んでいた。

ところが1990年前後からCPU1個の半導体チップだけで構成できるようになってきた。標準ロジックはもはや要らなくなった。その勢いを作ったIntelは、ひたすら高性能化を目指し32ビットプロセッサを開発、コンピュータメーカーもCPUボードを作らずIntelCPUチップを採用するように変わった。パソコンだけではなく、ミニコンやオフコン、ワークステーションはもっぱらIntelチップが多用された。つまり、半導体はもはや部品からサブシステムに変わったのだ。

日本の総合電機の首脳陣は相変わらず、半導体を部品としか見ていない。半導体がサブシステムから現在のSoCのようにシステムの頭脳になったことにさえ、気がつかなかった。半導体SoCは今やハードウエアだけではなく、コンピュータのソフトウエアも取り込んでおり、その上でアプリケーションソフトウエアを走らせるようになっていることについ最近まで気がつかなかった。日本の半導体の没落は、IntelチップのCPUチップに代わったころからいまだに続いてきている。

 

半導体チップで競合に差をつける

 

今や半導体はシステムとなり、他社のシステムとは半導体技術(ハードもソフトも)で差別化するようになった。Nvidiaだけではなく、GoogleMicrosoftQualcommなどが自社で半導体を開発するのは、他社と差別化し有利に立とうとするからだ。残念ながら日本のIT企業は自分の半導体を開発しようとする機運が足りない。ビットコインなどの暗号資産が登場した時に自分のチップを開発した企業が出てきたが、まだ大きく成長していない。最近注目されるAIチップでさえハイパースケーラと比べると劣る。

日本のシステム企業は何で差別化するのか、何が他社より優れているのか、市場は伸びているのか、伸びている市場で競争しているのか。こういった視点が日本企業には少ないようだ。シリコンバレーが高い家賃や生活費にも拘わらずいまだに成長し続けるのは、常に競争意識があるからだ。日本企業が世界と闘えるようなマインドになっていただけるのはいつになるだろうか。ただ、若いエンジニアやビジネスパーソンがAI関連で頑張っている姿を見ると、大手企業の経営者は彼らを支援することで自分ももっと成長しようというマインドになってほしいと願う。