時価総額世界一の企業に返り咲いたNvidia
2025年7月 5日 10:21

今週になり、Nvidiaが時価総額3兆8850億ドルで世界一の企業に返り咲いた(図1)。2位のMicrosoft1800億ドル、3位のAppleには7000億ドルの差をつけた。4位のAmazonとは1.5兆ドルもの差をつけており、時価総額のトップ争いは、NvidiaMicrosoftApple3社の間で繰り広げられている。

 

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1 時価総額で世界上場全企業の頂点に立ったNvidia 出典:CompaniesMarketCap.com202574日)

 

時価総額とは、発行されている株式総数×株価、で表される。いわゆる企業価値を表現している。この時価総額は、その企業の売上額とはあまり強い相関関係がない。株価であるから、投資家の期待値を表現している。

時価総額ランキングのトップ100社ランキングは、CompaniesMarketCap.comがほぼリアルタイムで株価と連動計算しながら発表しているなかで、最近の期待は、やはり半導体だ。時価総額トップ10社のうち3社が半導体企業だ。Nvidia以外の2社は、米国のBroadcomと台湾のTSMCである。Broadcomはつい数年前までシンガポールに本社を置いていた。そして、11位以下から100社以内には6社が半導体あるいは半導体関連企業である。つまりトップ100社のうち9社が半導体企業となっている。

日本企業は残念ながらトヨタ自動車が61位にいるのみ。トヨタの2024年度売上額は48367億円だが。その時価総額は2280億ドル(328300億円)となっており、年間売上額よりも少なく、投資家からの期待が少ないことを表している。

かつては時価総額のトップ争いは石油企業や製薬企業などが多かった。それがGAFAGoogleAppleFacebook(現Meta)、Amazon)と呼ばれるITサービス企業が占めるようになった。ここに半導体企業も参加し始めたのが昨年。トップになったNvidiaとはどのような会社なのか、この10年間の取材をベースに昨年10月に「エヌビディア」の本PHP研究所から発行した(図2)。

 

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図2 ジェンスン・フアンCEOからいただいたサイン 「津田さんへ、AIの未来のために、ジェンスン・フアン」と書かれている

 

彗星のごとく時価総額ランキングに登場したNvidiaの株価は、急成長した反動ですぐに落ちるのではないか、という投資家などからの疑問をよそに、常に右肩上がりの成長を描いていた。投資家からの期待が疑念と交差するかのように、1位と3位の間をまるでローテーションでも組むかのように、NvidiaMicrosoftApple13位に定着した1年だった。

また一部の専門家からは、Nvidiaのチップよりも消費電力が1桁以上も少ないチップがAMDやIntel、SambaNovaなどからリリースされてきたため、Nvidiaの牙城はすぐ崩れる、という見方もあった。しかし、現実には、3兆ドル以上の時価総額をほぼ維持してきた1年だった。売上額は四半期ベースで8期連続QoQ(前四半期比)2桁成長を続けており(3)YoY(前年同期比)では、毎四半期ごとに6割、7割成長を続けている。ちなみに直近の2026年第1四半期(20252月~4月期)は69%成長だった。しかし、決算発表があり高成長を示しても直後の株価は下がった。もうそろそろ業績は落ちてくるかもしれないという投資家からの疑念のためだった。残念ながらその疑念は裏切られた。

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3 Nvidiaの四半期ベースの売上額は成長し続けている 次の四半期も過去最高と見積もっている 出典:Nvidiaの決算資料から筆者がグラフ化

 

なぜNvidiaは成長を続けられるのか?この理由を「エヌビディア」の本(図2)に書いたのだが、同社の成長秘話は技術と経営と両面からある。技術的には半導体チップ設計技術、そのチップを動かすためのソフトウエア技術、AIライブラリ、AIを創るための設計ツール等さまざまな広範囲にわたるハードウエアとソフトウエアの技術は言うまでもない。加えて経営術面でも、例えば日本の経営者とは真逆の発想を社長のジェンスン・フアン氏は持っている。Intelの新社長となったリップブー・タンCEOは、「(Nvidiaが行っているような)フラット経営を目指す」と述べている。

手前味噌であることを許していただければ、「エヌビディア」の本は経営層に読んでもらいたい本だ、という感想を述べておられた人もいた。経営層にとって、Nvidiaの経営にどうやって近づけるかが、今成長できずに悩んでおられる経営者にはこの本はヒントになりうると信じている。