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NEWS&CHIPS|国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト、メディアコンサルタント津田建二の事業内容~技術・科学分野の取材・執筆(国際技術ジャーナリスト)
ブランド不要のファウンドリTSMCが世界半導体の頂点に立った
2022年11月20日 13:56

 TSMCが初めて世界ナンバーワンの半導体メーカーに立った。2022年第3四半期における世界半導体企業の上位15位までのランキングにおいて、TSMCSamsungIntelを抜き世界の頂点に立った。第3四半期のTSMCの売上額は202億ドル、第2位のSamsungのそれは172億ドル、3位のIntel153億ドルとなった。

  これは米市場調査会社のSemiconductor Intelligenceが各社による第3四半期の売上額をまとめた表1をベースにした。ここでは、ファウンドリの売上額を含んでいないものの、TSMCの売上額がすでに発表されていることからTSMCが首位になった。ファウンドリを含めないのは、次のような理由による。半導体各社の売上額を合計すると、世界半導体市場規模がわかるが、ファウンドリの売上額=ファブレスやIDM(設計と製造を手掛ける半導体メーカー)のコスト、となるため、ファウンドリを加えると半導体の市場規模が正確ではなくファウンドリの分をダブルカウントすることになる。とはいえ、ファウンドリも半導体製造会社であるから同じ売上額ランキングで表現することは適切だと思う。

3Q22Ranking.jpg

1 ファウンドリを除く世界の半導体企業ランキング 出典:Semiconductor Intelligence

 

 WSTS(世界半導体市場統計)の発表によると、2022年第3四半期(3Q)の世界半導体市場は、前期比で6.3%減少した。第4四半期もよくないため、2022年の前半と比べ、後半は10%以上落ち込むとみている。この落ち込みの割合は、2009年の前半が2008年後半に比べ、21%低下したとき以来の大きな落ち込みだという。このときはリーマンショックによる影響だったが、わずか1年で回復した。

  今回、20223Qの落ち込みはメモリメーカーがひどく、Samsungが前四半期比19%減、SK Hynixは同20%減、Micronは同23%減となっている。日本のキオクシアはまだましで同6.6%増と善戦してるように見えるが、単なる時期ずれの影響にすぎずない。むしろ9月末にウェーハ投入量を30%減らすことを発表している。

  メモリメーカーとは反対に工業用や自動車用のチップに力を入れている半導体メーカーは好調で、欧州のInfineonは同15%増、STMicroelectronics13%増と好調だ。表1には掲載されていないが、トップのTSMCは、ドルベースで同11%増、台湾元ベースでは15%増となっている。

  TSMCは第4四半期の見通しを3Qと同程度の199207億ドルと見込んでいる。それでもTSMCは今後を警戒して、投資を当初予定の2割減としている。TSMCもほかの半導体メーカーと同様とみるのは間違い。TSMCの投資には未来志向の投資が多く含まれている。例えば、20222Qの投資では、「Capexの中で7~8割を2nmプロセスの開発に使った」と同社広報トップのNina Kao氏は述べている。つまり直近の5nm4nm3nmへの開発投資はすでに終わっているのである。量産投資も含めてのCapexであるため、「次の新工場への投資を遅らせているだけで、特に金額を減らしたわけではない」、というコメントも決算報告でCEOC.C.Wei氏は述べている。

  メモリメーカーの落ち込みは、ユーザーやディストリビュータの在庫調整にすぎず、将来への投資を減らすわけではない。この在庫調整にはせいぜい1年程度の期間がかかるかもしれないが、生産調整によって在庫を減らすだけである。むしろ、将来にわたって成長産業である半導体に投資する姿勢は変わらない。

  しかも半導体メーカーの中でメモリメーカーが売り上げの山谷の差が最も大きい。1台のシステムにSoCやマイコン、電源ICなどは、同じ製品を1個あるいは2個しか使わないが、メモリはバイト単位で使うため最低でも8個か9個(誤り訂正のためのパリティビット用)ないし16個か18個以上を使う。使用量が1台のシステムによって大きく左右されてしまうのだ。このためSoCやシステムLSIの製造を手掛けるファウンドリの浮き沈みは小さい。

  ファウンドリというブランドを持たない台湾企業が半導体企業のトップにのし上がったということは、半導体産業ではブランド力は消費者向けの産業よりもあまり意味を持たないということになる。名よりも実を取る台湾のビジネスは、いよいよ大きくなってきた。