またしても幼稚園児を送迎バスの中に置き去りにして死亡させるという事故が起きた。炎天下の中でバスの中は50℃にもなってしまう。こんな状況では大人でさえも何分もじっとしていられない。ましてや子供の体は大人と違って未だ頑丈にできていない。このような痛ましい事故は毎年どこかの保育園、幼稚園で起きている。子供は国の宝である。なぜ、こういった事故が繰り返されるのか。
幼稚園職員が人数をきちんと管理していればこのような事故は起きないはずだが、それでも起きているということは、単なる行政指導のようなインストラクションだけでは済まされないことを示している。大人や職員がしっかり管理さえすれば済むことではあるが、時に気のゆるみがでて、このような事故に至るのであろう。
こうなると、たとえ大人がミスしても子供がバス内にいることをみんなに伝えるシステムがあれば防げるはずだ。実は、それに適したシステムがすでに出来ている。レーダーセンサ(電波センサともいう)だ。24GHzや60GHzなどのミリ波を用いたセンサを使えば実はそれがわかる。赤外線センサのように光を使うセンサだと、座席の陰に隠れていて見えない場合は検出できない。しかし、ミリ波レーダーを使ったセンサだと、座席の陰であろうと毛布の下であろうと人間には見えない所に幼児がいても、検出できる。
しかも、センサからのデータをデジタルに変換し、画像データにしたりあるいはテキスト情報にしたりして、4Gや5Gなどのセルラーネットワークから各自のスマートフォンに園児が残っている情報を届けるようにすればよい。それも運転手だけではない。センサからのデータを受け取る人が幼稚園の職員と園長などがみんなで共有していれば、万が一運転手がスマホからの連絡に気が付かなくても誰かが気が付く。場合によっては、園児の親にもその情報が届くように設定しておけば、みんながすぐに気が付いて事故を防ぐことができる。死と直結するシーンではプライバシーがどうのこうのという問題ではない。
図1 レーダーを使うセンサチップはアンテナ付きで数ミリ程度の大きさしかない 出典:Infineon Technologies
自動車側のシステムをさらに賢く(smartに)するなら、園児を検出したら自動的にエアコンが入るようにしておくことも可能だ。
ただし、レーダーセンサを製造できる半導体メーカーはInfineon
Technologiesなどまだ限られている。しかし、その将来性を見込んで開発し始めている日本の半導体メーカーもある。ルネサスが最近買収を決めたインドのファブレス半導体企業がそれだ。センサからシステムを組んでスマホで結果を見られるところまでどの企業が早くやるか、楽しみだ。
実は米国でも毎年10件くらい、クルマの中に幼児を置き去りにしてしまう事故が絶えない。このためレーダーセンサのクルマへの装着を義務付ける法律を定める議論を始めている。日本でも送迎バスだけではなく、車内に子供を置き去りにしてしまう事故が絶えない。レーダーセンサのようなハイテク機器は人の役に立つものであり、決してアクセサリではない。日本でもレーダーセンサの設置を義務付ける法律をさっさと制定すべきであろう。