「三角関数なんになる」、愚かな知識人
2022年5月21日 09:52

 三角関数より文学が大事とか、金融経済が大事とか、大事な学問を馬鹿にする発言はいつの時代でもあるようだ。全部大事なはずだ。決して比べるものではない。自然と比べると人間の知識は微々たるものだ。偉大な科学者ほど自然界の不思議や深さをよく知っている。逆に自分が理解できないことを、「そんな学問なんになる」と切り捨てる態度は、不遜でしかない。むしろ自分の無知をさらけ出してどうする?

 

 学者は人間が不思議に思うことを、学問づけて理論的に体系化する。それは重要な仕事であり、「そんなもの、なんになる」と片付けることでは決してない。例えば、音声認識のアルゴリズムを研究すればするほど、人間は言葉をどう理解しているか、発音はどのように脳に入っていくのか、ということに対してモデルを立てて音声を理解できるマシン(ソフトウエアや半導体チップ)を作ってきた。さまざまな知識を総動員して技術として完成させる。

 

 筆者は金融のことは苦手だが、デリバティブで有名なブラック-ショールズの方程式は理解できる。この微分方程式は、時間と共に変化する状態をある物理量で表現している訳だが、これも「微分積分、なんになる」と言われた時代もあった。微分方程式とは何か、微分とは積分とは何を表しているのか、という基礎をしっかり押さえておけばブラック-ショールズの方程式は理解できる。

 

 三角関数も同じだ。回転はある意味、無限運動だが、それを数学的に表現すれば角度情報が必要な三角関数になる。音や電磁波は波の性質を持つため、波として表現できる。土木建築で使う三角測量、携帯電話の電磁波回路の設計、モーターが滑らかに静かに動くような設計、地震に強い建物の設計、地震による津波の予測など、三角関数は人類の役に立つ仕事に大いに生かされている。

 

 「三角関数、なんになる」は自分の無知をさらけ出している愚かな知識人ではないか。なぜなら、そのような発言をする前に自分で勉強すべきだからだ。自分が理解できないことを「~~、なんになる」発言は、社会的に知名度の高い立場にいる人間は決して使うべきではない。影響が大きいからだ。