大雪で見えないLED信号機は改善できる
2015年3月13日 22:04

この冬の大雪は、LED信号機にも雪を積もらせてしまい、従来の白熱灯の信号機よりも優れたメリットが仇になった、というような記事を見た。雪が赤、青、黄の信号灯をふさいでしまい、色が認識できなくなったのだ。従来の信号機は白熱灯だったから、無駄に発熱し雪を溶かしてくれた。このため、雪がランプに付着しても熱で溶け、赤、青、黄の色が見えなくなることはなかった。

 

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この記事を読んだとき、まるでLED信号機が悪いように読めた。また、好き勝手に書き込むツイッターでは、雪国にLED信号機を設置したのはバカだ、という口調も少なくない。ではどうすればよいのか?だからと言って消費電力が大きく、明け方・夕方の斜めからの太陽に反射されて青、黄、赤の信号が見えにくかった白熱ランプに戻るのか。そういう訳には行かない。

 

答えは簡単だ。雪に強いLED回路設計をすればよい。むしろ、大雪という災害は、LED信号機にもっと改善の余地のアイデアをくれたと考えるべきではないか。普段のLED信号機は、消費電力が少なく、CO2の排出を減らし環境に優しいだけではなく、視認性が高く、事故を起こしにくい信号であることに変わりはない。だったら、大雪でも雪を解かすような構造にすればよいのである。

 

ここにテクノロジーを活用する。例えば、大雪の時にだけ、電気を無駄に使うように電圧を上げ電流をたくさん流し、発熱を促せばよいのである。LEDは電流を流せば流すほど輝度は増し、発熱する。ただし、発熱しすぎると熱暴走を起こす恐れがある。有名な787機のバッテリ故障と同じように熱暴走を起こしてしまえば、LEDを配線しているボンディング線は溶けだして使えなくなる。つまり、熱暴走を起こさない範囲で電流をたくさん流し、輝度を上げ発熱させる。幸い、雪は冷却材として発熱を抑える役割を果たすから、熱暴走を防ぐ役割もある。

 

さらに、センサを付けて、雪を検出したら、LED電流をたくさん流すようにパワートランジスタを動作させればよい。雪を溶かせるかどうかを実験して確認する。一つの信号機あるいは一つの交差点の4台の信号機で雪を検出すると同時に、他の場所にある信号機にもその情報をM2M(マシン-ツー-マシン)などで伝える。LED信号機もIoT(インターネットオブシングス)になる。各地の信号機に全てこのような対策を施せば、回路部品コストを大量生産でき、LED信号機のコスト上昇を抑えることができる。

 

要は、LED信号機を悪者にせず、テクノロジーをしっかりと駆使すれば済むことだ。新しいテクノロジーは、古いテクノロジーよりもメリットは非常に多い。もし新しいテクノロジーに欠点が見つかれば、その欠点を次のテクノロジーで克服していく。これが人類の進化の歴史である。大雪でLED信号機が使えない、という事実が出てきたら、LED信号機を使えるようにするためにはどうすればよいか、を考えればよい。白熱灯に戻ってはデメリットが多すぎて、人類の進歩に逆行する。

 

環境に優しい社会を作ると称して、昔の生活に戻ればよいとする人たちがいるが、テクノロジーをもっと知って欲しいと思う。CO2排出量を下げよう、環境をもっと良くしようと思うのなら、テクノロジーで解決する方法を求めればよいのであり、昔に戻ることではない。人類が他の動物よりも賢く、しかも進化できたのは、現状よりもさらに改善する方法を考え、実行してきたからに他ならない。

 

数年前にクルマの制御に使っているソフトウエアの不具合(バグ)発生を知り、だからソフトを使わずに昔のような純粋機械のクルマを作るべきだという記者がいた。これも今回の大雪事件と同じ態度だ。交通事故死がここまで激減したのはクルマのエレクトロニクス化、コンピュータ化によるところが大きい。さらに進化させるためには、ではどうやってバグ取りを効率よくできないか、というテクノロジーによる解決法を見つけることが重要だ。

 

だから、今回の大雪によるLED信号機故障の記事やツイッターをみて、これを解決する方向へ持っていこうという意見が出なかったことは、テクノロジーを知らなかったからではないかと思う。もっと謙虚にテクノロジーを知り、人類の進歩を進め、社会を変えていく。これこそ、今は亡きスティーブ・ジョブズ氏が言っていた「Stay hungryStay foolish」に通じるものがある。

                                                (2015/03/13)