シリコンバレーは世界一差別のない所
2015年3月 1日 20:24

シリコンバレーでは男女差別がない。国籍による差別もない。米国は差別をなくすことに非常な努力をしてきた国だが、東海岸の企業や欧州の企業はまだそこまで行かない。しかし、シリコンバレーは全く平等なところだ。差別をしていては競争に負けるからだ。

 

これは、シリコンバレーの新聞、サンノゼマーキュリーニュース紙の記者を20年経験した後、シリコンバレーのコンサルタント会社、シリコンバレーリーダーシップグループ(SVL Group)で、コミュニケーションズ担当VPのスティーブ・ライト氏がその調査について発表したもの。シリコンバレーでハイテク企業を動かすCEOにアンケート調査した。それによると、シリコンバレーのハイテク企業で働くアメリカ人と、非アメリカ人の割合は、ほぼ半々、むしろ非アメリカ人の方が少し多い()。グーグルの創業者の一人、セルゲイ・ブリン氏はロシア出身、インテルの元社長アンドリュー・グローブ氏はハンガリーからの移民である。

 

図.jpg

図 シリコンバレーで働く外国人や女性は多い 出典:SVL Groupのデータを元に津田建二が作成

 

また、女性と男性の割合についても、女性の方がわずか多い。1999年から2005年までヒューレット・パッカード社の社長を勤めたのはカーリー・フィオリーナ氏だったし、ヤフーの現在社長はメリッサ・マイヤー氏だ。

 

シリコンバレー以外の企業でも、優秀な外国人や女性を確保しようとする企業は増えている。例えば欧州では、シーメンスから独立したインフィニオン・テクノロジーズ社のミュンヘン本社に働く外国人は多い。そこでは50数カ国からの人々が働いていると簡単に言う。英国のエディンバラ大学を訪問した時も、世界中から人々が留学し、何百人も研究者や教師として働いていると聞いた。アームやイマジネーションテクノロジーズでも数十カ国からきていると聞かされた。外国人と一緒に働くことは当たり前なのだ。

 

加えて、人を大事にする企業風土がインフィニオンにはあり、その究極は家族である。小学校入学前の子供を預かる保育所と幼稚園が本社敷地内にある。優秀な社員の子供がいずれインフィニオンに入って欲しいという経営判断からきているという。この「魅力ある人材育成」のために女性の管理職を増やす計画もある。現在、ワーカーを除くホワイトカラー社員の25%が女性で、その内の管理職は12%しかまだいない。これを2020年までに20%に増やそうとしている。そのために働く環境を充実させ、子供のケアが重要だとしている。

 

シリコンバレー以外の地域や国では、外国人や男女の差別をなくし、優秀ならば国籍や性別は無関係にしようと思う気持ちは強い。優秀な人が辞めると、その人と同等以上の力のある人を採用することが極めて難しいからだ。だから今は、簡単には首を切らない。現実に即戦力となる人を一人採用するためにかかるコストは300~400万円と言われている。リクルーティングのための仲介企業へのコストや、ヘッドハンティングなどのコストは実に高い。

 

だからこそ、優秀な人が辞めないように福利厚生に投資することは常識となっている。グーグルやアップルは24時間、社内のカフェテリアをオープンしており、しかも社員は全員無料だということは、有名な話だ。リニアテクノロジーのボブ・スワンソン会長は、私とのインタビューで「優秀な人間を見つけ、その場所を離れたくないというのであれば、本人の住んでいる場所をデザインセンターにする」と答えている。この方針は、ライバル会社でも採用するようになってきた。他のアナログ半導体メーカーでも同様なことを2年後に聞かされた。優秀な人間ならば国内外、男女を問わない。その理由をスワンソン氏は「優秀なアナログ技術者の採用は、いつも大変苦労する。絶えず大学と掛け合うことが多く、労力を費やすからだ」と述べている。同氏は、リーマンショックの時には一人もクビにしなかった、と胸を張って自慢する。

 

外国企業に引き換え、日本は本当に、差別の多い国だと思う。日本の企業や団体では外国人の比率は極めて低い。1%にも及ばない。学会や講演会に出席してもほとんどが日本人、それも男性ばかりである。女性は1割に満たない。ましてや外国人はほぼゼロである。国際化、グローバル化とは名ばかりだ。外国人が家を借りる場合、差別や偏見も多いと言われている。この現状に対して、企業や団体などの努力が見られない。外国人採用の条件が、ただ日本語を話せることになっているという現状は、能力開発にならない。

 

かつて、外国人を採用した日本企業では、外国人に翻訳や通訳をさせていた。その人の持つ能力を活かそうとは考えていなかった。このため、日本企業を止めていった外国人は多かった。

 

政府が女性の地位向上と称して「男女共同参画プロジェクト」を推進していても、誰も責任もってこのプロジェクトを管理、進行させていない。こう書くと、男女共同参画プロジェクト」の責任者はいる、と政府は言うだろう。では、社会で女性の責任ある地位が増えていなければ、命を賭けて責任をとっているか。指導者の責任とは、強いリーダーシップを与えられ、成功に導くための道筋を描き、実行したうえで、部下を一つの方向に導くことを指す。これができていなければ責任を果たしているとは言えない。もちろん、目標を達成していなければ、そのやり方が間違っていたわけだからリーダーを辞めなければならない。どう見ても責任者は不在だ。だから日本で女性や外国人の地位は上がらない。プロジェクトを推進する以上、責任を持って結果を出してほしい。

(2015/3/1)