情報収集アンテナが高い台湾IT産業
2014年11月 7日 23:44

世界的な大きな流れ(メガトレンド)と人間の永遠の願いを元に、これからのIT業界を支える半導体産業について分析した本「メガトレンド 半導体2014-2023」の一部を台湾のIII(資訊工業策進会)傘下のMIC(産業情報研究所)が台湾語に翻訳・発行することになった。台湾のMICは市場調査を手掛けるシンクタンクである。

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ことのいきさつは、先日、発行元の日経BP社に台湾語に翻訳させて欲しいという問い合わせがあり、編纂した筆者の元に連絡がきた。早速、翻訳を希望している章の著者に問い合わせた。全ての著者が快く同意してくれたため、その旨をBP社に伝えた。今日、AETフォーラムのイベントでその著者の一人にお会いし、台湾は何と情報に対するアンテナの感度が高いことだろうかと彼は述べていた。

 

台湾のシンクタンクがこの本を評価してくれたことは非常にうれしかった。今や台湾は、ファウンドリでは世界第3位の半導体メーカーとなるTSMC、ファブレスでは世界12位のメディアテックといった、いまだ成長やまない半導体企業が君臨する地域だ。彼らは、世界中の半導体情報にアンテナを張り巡らせて、自分たちの役に立つと思う情報を手に入れる。

 

台湾企業のアンテナの高さには定評がある。米国、欧州、アジア、中国、そして日本、彼らのハイテクと組める相手や、市場のありそうな所には素早く反応する。半導体の景況を鋭くキャッチし、それを自社に組み込む。TSMCはまさに情報収集とキャッシュフローを見ながら投資を判断してきた。決して無茶な賭けではない。

 

かつてパソコンのプロセッサ情報には米国を、液晶技術には日本を常にウォッチしており、情報を集めた。インテルがマイクロプロセッサの新製品を発表した1ヵ月後には、プロセッサとメモリやインターフェース回路をつなぐノースブリッジやサウスブリッジと言われるチップセットを設計済ませた。これぞ、華人ネットワークと言われる強みである。液晶パネルの生産には日本を訪問した。基板からカラーフィルタ、偏光板、アモーファスシリコントランジスタ技術など液晶パネルに必要な技術を全て揃えた。

 

今日の台湾の実力は、情報収集能力の高さと貪欲な開発意欲によるところが大きい。これに対して、日本の半導体はどうか。情報収集の感度は鈍くないか。DRAMの失敗の原因の一つは、コンピュータのダウンサイジングという大きなメガトレンドを見てこなかったことにある。では、今後は大丈夫か。現在の大きなメガトレンドを見ているだろうか。「メガトレンド 半導体2014-2023」は、今後のメガトレンドを紹介したものである。この本を活用し、今後のビジネスに生かしてくれることを願う気持ちは発行直後と変わらない。

 

発行後1年経とうとしているが、細かい見通しに関して修正が必要な所が少しあるものの、大きなメガトレンドは変わらない。日本でもこの本、というより調査レポートを仕事に活かしてくれることを願う。この本について講演することが多くなったが、質疑応答を通して、同意いただけることが多い。

2014/11/08