このブログのミッションについて
2013年1月 4日 21:52

新年あけましておめでとうございます。今年は良い年になることを祈ります。

 

昨年の8月末に立ち上げたこのブログだが、このミッションは、国際技術ジャーナリストの立場から世界のIT/電子/半導体産業の動きを見ながら、日本の産業を復活させるためのアイデアを提供すること、である。さらにジャーナリストであるから、メディアのあり方も議論する。技術ジャーナリストであるからアカデミックな専門性についても議論する。実は、日本の電子/半導体産業の復活のためには、これまでの仕組みをガラッと変えなければならないことがわかってきた。その範囲は、単なる半導体企業の製品や技術、ビジネスモデルだけにとどまらず、金融、産業全体、行政官僚機構、大学、政治体制などにも及ぶ。一見、電子・半導体産業とは関係のないことに言及する場合でも、視点は半導体産業の復活にある。そのための仕組み作りへの提言となる。ここまで言及しなければならないほど範囲が広くなると、編集長を仰せつかっているセミコンポータルの範囲を超えてしまう。だから、技術ジャーナリストとしてのブログを立ち上げた。

 

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私はこれまで半導体産業と共に歩んできた。大学で物性物理学を学び、その中に半導体物理も含まれている。企業に入り、半導体事業部で信頼性品質管理技術や高周波回路技術、ローノイズ半導体、個別半導体デバイス、プロセス、マスク設計など、個別半導体を扱っていたために設計からプロセス、アセンブリまで一通り経験させていただいた。その間、半導体技術を習得し知識を吸収し応用し特許も書いた。

 

その後、日経エレクトロニクスに移ってから技術ジャーナリストとしての道が始まった。当時は日経マグロウヒル(Nikkei McGraw-Hill)社と呼んでいた。入社前まで半導体エンジニアだった私は恥ずかしながら日経と産経を区別できていなかった。マグロウヒルは、半導体や物性物理を勉強する上でたくさんの本を出版していたためよく知っていた。高名な出版社が日経エレクトロニクスを出していると思っていた。入社して初めてマグロウヒルの組織を知り、マグロウヒル社のビジネス雑誌部門が日経マグロウヒルになり、書籍部門がマグロウヒル好学社になったことを知った。それぞれ日本の企業と組み、合弁企業となった。米国から見ると、日本法人を作るためのグローバル化が始まっていたのである。日経マグロウヒルの設立秘話は、ブログを参照していただきたい。

 

日経エレクトロニクス時代には、ホットエレクトロン効果、短チャンネル効果、ゲートターンオフサイリスタ、MEMS圧力センサ、CMOS特集、信頼性技術、DRAM技術、GaAsICなどの特集・解説記事を書きまくった。さらに日経マイクロデバイスの創刊、さらに英文誌Nikkei Electronics Asiaの創刊に係わった。この時は、英語で記事を書き、香港のスタッフと毎日英語で業務のやり取りをした。講演も増えてきた。エレクトロニクス実装学会の国際委員会のメンバーと一緒にシンガポールへ出かけ講演した。この頃から英語で講演をするようになった。このあと一時、アドミニ部門に配属されたが、再びジャーナリストに戻してもらった。Nikkei Electronics Asiaはアジアのエンジニアの視点で作っていた雑誌であり、彼らとの取材を通して日本の技術だけではなく文化・経済・芸能などについても海外の視点で日本を見ることができるようになった。この時の経験が最も国際ジャーナリストとして大きな肥やしになっている。

 

その後、ライバル出版社であるリード・ビジネス・インフォメーションに移り、Electronic Businessの日本版、Electronic Business Japanの発行準備、米国Electronic Businessスタッフと議論し、2003年創刊にこぎ着けた。さらにSemiconductor International日本版とDesign News Japanの同時発行に当たり、米国のPete Singer編集長、John Boldパブリッシャー、Karen Field編集長、Dan Hirshパブリッシャーらと議論し合った。さらに毎年、日本の状況を説明するための米国Reedでのミーティングで、英語でのプレゼン能力を高められた。

 

海外のメディア仲間との議論はB2Bメディアの在り方を知る上でとても良い勉強になった。さらにフリーになってから毎年Global Press Tourにおいて欧州やアジアのメディアのジャーナリストたちとも議論することで、海外メディアや企業が日本をどう見ているのか、より深みが増した。ニュースは早いが噂ばなしで時々早とちりする英国、公式取材情報しか得られない台湾、報道レポートにこだわり続ける米国、さまざまなジャーナリストと議論することは非常に楽しい。

 

インターネットの時代にはジャーナリストだけではなくブロガー、その他の方も情報を発信できる時代になったため、報道レポートだけにこだわり続けるとジャーナリストとしてのあり方を問われる。ただ、米国には技術アナリストという仕事がある。彼らは市場調査を技術の視点から行い、近未来を予測する。日本には技術アナリストという職業はまだ成り立たないようだ。

 

今のところ、正月が明けてから大きなニュースはまだ起きていない。はっきりしていることは、世界における技術や、経済、文化、政治の動きは極めて速い。日本の遅さは世界においてどのように位置づけられ、それでも日本に有利な分野、流れ、成長性を見極めることが今年の目標となるだろう。世界に付いていけない、見捨てられないために、やはりこれまでの知識と今の流れの把握、ニュースを交えて総合的に判断し、今年も提案していきたい。

2013/01/04