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NEWS&CHIPS|国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト、メディアコンサルタント津田建二の事業内容~技術・科学分野の取材・執筆(国際技術ジャーナリスト)
世界のメガトレンドから半導体の未来を議論した本
2013年11月17日 22:03

国内だけにいると、半導体は落ち目の産業のように思えてしまう。新聞は、リストラや工場売却の話しか報道しないし、半導体企業の成功した仕事について全く報道しない。円ベースで今年の売り上げはソニーが4%増、富士通セミコンダクターは3%増(アナログ・マイコンを8月に売却)、ルネサスは2%増になる見込みで、東芝は全社の利益の半分くらいを半導体フラッシュメモリが稼ぎ出しているようだ。もちろん、世界の半導体産業はもっと成長率が高い。

 

また、半導体はこれから先の成長分野の中核エンジンになる。医療・ヘルスケア、スマートグリッドやコミュニティ、スマートハウス、電気自動車やプラグインハイブリッド、全自律運転カー、ロボット、人工衛星、再

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生可能エネルギー、IoTInternet of Things)、ワイヤレスセンサネットワーク、エネルギーハーベスティング、モバイル端末、通信インフラ、IT/クラウド・コンピューティング、NFCカード、ともかくこれから成長するビジネス分野の全てにおいて頭脳となりエンジンとなる。半導体がなければ、これらの成長分野は成り立たない。

 

残念ながら、半導体というだけで日本ではもう本が売れないと聞く。半導体の作り方、製造技術に関する本は山のようにある。だが今、求められるのは、半導体を使う側の視点である。世界がいまどう動いているから、それに必要なシステムがどうなり、その結果、半導体の未来がどうなる、というストーリーの本は1冊もない。

 

この7月に日経BP 未来研究所から、半導体の未来を議論する本を作ってくれないか、という依頼をいただき、着手した。世界の大きなメガトレンドと人間の自然な要望(安心・安全・健康・長寿など)が作り出す未来のシステム、それに求められる半導体製品、それに必要な設計・製造技術、大きく変わるビジネスモデル、などを中心に半導体の未来を議論する本を作ってきた。大学の先生や企業のエンジニアに原稿を依頼し、自分でも執筆した。ようやく初校が終わり、再校段階まで来た。間もなく終わる。発行は、1217日を予定している。


この作業のため8月~11月のほとんどの土日を費やし、今年のクリスマスイルミネーションはいまだに何もテストしていない。今年のはじめに新たな点滅回路を試作し、テクトロニクス社の4万円台という低価格オシロスコープを使ってテストした(参考資料1)のだが、肝心の本番が手つかずの状態になっていて、近所の子供たちに申し訳ないと思っている。

 

校正の間、この本をもう一度読み直しながら、これまでにない本を作り出すことができて、良かったと思った。世界の大きなメガトレンドをしっかりつかむ企業でなければ今は生き残れない。日本の半導体はかつて、世界のメガトレンドを無視した結果、大敗したという苦い経験がある。DRAMで世界のトップからあらよあらよと転げ落ちていった様はまさにメガトレンドを無視した結果であった。コンピュータの世界で、ダウンサイジングという大きなメガトレンドを見ようともしてこなかったのである。

 

DRAM1980年代前半から大型コンピュータ(メインフレーム)に使われるようになった。日本の半導体メーカーは、16Kビットまでの米国支配から64Kビット以降は我が世の春を謳歌した。1986年には世界半導体ランキングの1NEC2位日立製作所、3位東芝という圧倒的な地位を手に入れた。DRAM64K256K1M4Mとひたすら4倍の集積度を上げていけばよかった。マーケティングで顧客の声を聞かなくてもひたすら4倍の製品を開発すればよかった。当時の大型コンピュータから見るとDRAMの容量は小さすぎて、集積度を上げてくれさえすればよかったからだ。

 

ところが、コンピュータサイドは大きなトレンドを起こしていた。大型コンピュータでは、ユーザーがプログラムを書いても、大勢順番待ちを強いられ3~4日間待たされることが常だった。このためコンピュータユーザーは、もっと性能が低くてもいいから安くていつでも使えるコンピュータが欲しい、という要求を強めていた。このためコンピュータは大型から、ミニコンやオフコン、ワークステーションと小型に向かっていた。その究極がパソコンだ。ところが、パソコンに使うメモリとなればとにかくコストを下げることが最優先。このため誤り訂正回路を使った高信頼のDRAMよりも、低コスト重視のDRAMへとトレンドは動いていった。

 

この動きにいち早く飛びついたのが米国のマイクロン社だった。安く作るための設計技術・製造技術、全てをつぎ込んだ。デザインルールを小さくする微細化(リソグラフィ)技術、同じデザインルールでもチップを小さくできるコンパクトなレイアウト法、そして工程を短くするマスク削減、こういった技術を1985年前後から注ぎ込んだ。彼らはとにかく低コストで作ることに専念し、チップを大きくしない技術を最優先した。狙いはパソコンのみ。もしパソコンがソフトエラーを起こしてフリーズしたら再起動をかければすむ。ソフトエラーを防ぐための回路を集積するとチップが大きくなってしまうことを嫌った。

 

ところが日本のDRAMメーカーは相変わらず大型コンピュータ向けに誤り訂正回路、冗長ビット回路などエラーを起こさない回路を集積した高価なDRAMを作り続けた。マイクロンからライセンス供与を受けたサムスン電子が90年代前半にDRAMを出しても国内トップの責任者は「安売り競争に巻き込まれたくないから安いDRAMは作らない。人件費の安い国の企業とは競争しない」と明言した。ところがマイクロンが安いチップを製品化すると、初めて黒船が来襲したような大騒ぎになった。時すでに遅し。時代は大型コンピュータからパソコンへ主役が交代していた。日本メーカーは世界のトレンドを見ずにやってきた結果、大敗したのである。

 

この苦い経験を二度と味わってほしくない。このためには世界の大きなメガトレンドを知り、自社が向かうべき方向をつかみ、世界のトレンドと一緒に成長していけばよい。こういった願いを込めて、今回の本を作成した。タイトルは「メガトレンド 半導体 2014-2023」である。

 

参考資料

1.    個人で高性能オシロが買える時代が到来-テクトロの4万円台オシロを試す(連載5回)

http://news.mynavi.jp/series/tbs1000/001/index.html

http://news.mynavi.jp/series/tbs1000/002/index.html

http://news.mynavi.jp/series/tbs1000/003/index.html

http://news.mynavi.jp/series/tbs1000/004/index.html

http://news.mynavi.jp/series/tbs1000/005/index.html