またもや日本人の存在感がない
2013年4月18日 20:24

Globalpress主催のElectronics Summit 2013の予定がほぼ終わり、移動日を残すだけになった。最終日はサンタクルーズからサンフランシスコ空港の近くのホテルに移動、1泊する。今回も欧州、米国、アジアの記者と話が出来て有意義だった。

 

いつもこの会議で感じることだが、日本人記者が少ない。欧州からはイタリア、英国、ドイツ、デンマーク、ノルウェイ、ハンガリーなどから参加している。常連も多い。米国ではEE Times.comや、Chip Design/System Level DesignElectronic Products MagazinePower Systems DesignSemiWikiなどの記者が来た。アジアは中国、インド、韓国、台湾からの記者が多い。日本からは私と、元ソニーのプロセス開発エンジニアだった服部毅氏が電子ジャーナルの記者として参加した。

 

日本人記者が海外取材する場合は、International CESなどの展示会や IEDMISSCC などの学会発表が多い。発表資料はふんだんにあるため、英語を聞きとれなくても十分な資料があるため記事は書ける。展示会は製品や試作品を見るだけの取材も多い。資料がたっぷりあり、読めばわかる。ビデオで内容を収めることもできる。

 

ところが、記者会見となると日本人の参加者はぐっと減る。このGlobalpress の会議は記者会見の寄せ集めのような会である。記者は当然質問するし、 Q&A 

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のやり取りも多い。2月にスペインのバルセロナで行われたMobile World Congressの際も、STマイクロエレクトロニクスが記者会見を開いたが、私以外の日本人は誰も出席していなかった。フランスとイタリアの企業同士が一緒になって生まれたSTマイクロは、共通言語は英語である。その記者会見でも英語で行った。

 

今回のGlobalpress主催のE-Summit 2013では、英語を母国語としない記者が多いため、どの国のプレゼンタも英語を理解しようと努めてくれる。大変ありがたい。私もあまり英語が上手ではない。プレゼンタによってはゆっくり話してくれる人がいるかと思えば、速すぎる人もいる。ただし、英語を母国語としない記者が多いため、早口のプレゼンは不利である。理解が追いつかない恐れがあるためだ。記者が理解すれば記事は書かれやすい。プレゼンする企業側にとっては書いてもらいたい方が得のはずだ。

 

断わっておくが、このE-Summitでは、書けというオブリゲーションはない。提灯記事を書く義務は全くない。にもかかわらず、参加する記者にはE-チケットとホテルの予約をしてくれ、記者側の費用負担はほとんどない。私のようなフリーの記者にとってはたいへんありがたい。

 

話は逸れたが、これまでのニュースに出たことのない話であれば、記者ならみんな自然に書く。しかし以前聞いた話と同じようなら誰も書かない。企業側はできるだけ新しいニュースを持ってやってくる。例えば、米国のエレクトロニクス産業でいつもクリアなメッセージを送るメンターグラフィックスのウォーリー・ラインズCEOの話は、いつ聞いても新鮮で面白い切り口の話をしてくれる。

 

エレクトロニクスでは、CPURAMROM、インターフェース、周辺回路、ストレージという基本ブロックからなるシステムを「組み込みシステム」と呼ぶ。スマホやデジカメ、テレビ、カーナビ、DVDプレイヤーなどデジタル家電と称する機器は全てこのコンピュータと同じ基本構成で出来ている。ROMに焼き付けるソフトウエアと、周辺回路のハードウエアで違いを出す。半導体回路も同じだ。ソフトウエアと周辺回路ハードウエアの両方が機器の決め手となる。ところが、ソフト技術者とハード技術者は互いに話がかみ合わない。互いにうまくいかない原因を押しつけ合うこともある。こういった対立に目を付け、互いに理解しやすい開発ツールをメンターが開発した。ウォーリーの話は、ユーモアにあふれ、問題点を理解しやすい形でプレゼンする。社内でも賢い(Smart)という声を複数の方から聞く。プレゼンの英語はとても聞きやすい。

 

ただ、こういった場に日本人記者が来ないことはとても残念だ。英語の問題はあるが、中国や韓国の記者の英語は正直言ってうまくない。でも話そうとする意欲はあり、理解に努める姿勢は素晴らしい。いろいろな国の記者と下手な英語で話をすると、彼らの文化を肌で感じることが多く、記事を書く背景として文化や習慣を知ることはとても重要である。ビジネスの違いは文化や習慣から来ることも多いため、このような背景を知っているか知らないかで記事に深みが違ってくる。もっといろいろな媒体から、この総合記者会見に出てくれれば日本の記者のレベルアップにもつながるだろう。欧米の記者からB2Bメディアの在り方を学ぶチャンスでもある。

2013/04/18