2017年10月

Sun Mon Tue Wed Thi Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
お気軽にお問合せください。
NEWS&CHIPS|国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト、メディアコンサルタント津田建二の事業内容~技術・科学分野の取材・執筆(国際技術ジャーナリスト)

取材紀行の最近のブログ記事

シリコンバレーはResilientがよく似合う

(2013年10月14日 03:52)

半年ぶりに米国西海岸に来た。このGlobalpress Connections 主催のEuroAsia 2013イベントは14日の月曜日から始まるが、久々に講演スポンサのスロットが全て埋まった。米国の半導体業界は回復してきたといえる。

 

到着した昨日は土曜日で休日だったため、サンノゼの街を歩きながらテクノロジー博物館「The Tech」へ行った。購入したチケットには、「シリコンバレーの精神」をこの館の特徴とする、と書いてある。

 

米国のこういった公共施設には寄付が多い。この建物のプレミアムパートナー(スポンサー)として、サンノゼ市(言うまでもないことだが)、アプライドマテリアルズ、アクセンチュア、シスコシステム、マイクロソフト、フレクストロニクス、インテル、ノキアの名前が入っている。さらに寄付した個人が手形を付けた6インチウェーハが、所狭しとガラスケースに並べている。ここには、ムーアの法則で有名なゴードン・ムーア氏、長い間アプライドマテリアルズの社長だったジェームズ・モーガン氏など業界著名人の名前がずらりと並んでいる。さらにはヒューレット・パッカード社を始めた、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカード両氏の名前も見える(写真1)

手形.JPG

 

米国では施設に寄付が多いのは、税金が控除されるからであり、寄付された側も名前を展示することで敬意を表している。日本ではお金は全て財務省が管理するため、控除にならない。だが、市民側に立てば、寄付するお金は何に使われるのかがはっきりしている。少なくともこの博物館の運営に使われていることだけは確かである。以前紹介したモントレーの水族館でも寄付したハイテク業界の著名人の名前が書かれていた。税金だと、一体何に使われているのかわからない。私たち市民にとって、何に使われるのかわからない税金よりも、使い道のはっきりした寄付の方が納得できる。日本でも寄付が税金から控除されるようになれば、もっと寄付したい気持ちが高まり、寄付金はもっと増えるだろう。米国では寄付は税金控除の対象になる。公務員の方々みんなが滅私奉公の精神を持っているのなら、税金も納得できるのであるが。

 

テクノロジー博物館では、ゲーム感覚でテクノロジーを体験できる見せ方が多い。面白かったのは「ジェットコースターの設計」というシミュレーションだった。ジェットコースターの線路コースを五つくらいに分け、それぞれの形を選ばせる。最初は適度な角度で、のぼりはある程度急な角度にして、下りは緩やかでカーブもつけて、最後は360度回転させる。ここの設計がまずいとゲームは終わってしまう。設計がうまく行くと、今度はそれを、隣にある大スクリーンに移動しその成果を見る。コースターと同じ椅子に腰かけながら大画面のスクリーンを見て、さきほどのシミュレータで設計したコースターを再現する。グラフィックスシミュレータによって、今度はジェットコースターに乗っている感覚が味わえる。

 

ここで感じたことは、National Instruments社の設計ツールLabVIEWや、MathWorks社のMATLAB/Simulinkのように、ドラグ&ペーストで部品を組み合わせて全体を設計できるツールが使えることだ。子供たちに提供されるこういった便利なツールが、自分でテクノロジーを体験できる仕組みになっていることに驚いた。展示するだけや、一方的に教えるだけでは、子供たちは納得しない。ゲーム感覚でものを設計できるという体験はとても大事で、子供は自分で設計したものが成功する、という貴重な体験が得られる。日本はテクノロジーよりも科学の見世物が多いような気がする。米国の方がより実用的で、かつ楽しく体験できるような構成にしている。ここにiPhoneを生み出す原点があるような気がした。

sandからsilicon.JPG

 

半導体の説明もしゃれている(写真2)。砂からシリコンへ、というビデオが流れていた。SiO2を主成分とする砂を還元すれはシリコンができるわけだが、そのシリコンから複雑なシステム回路を作り出す様子を示している。原料は、原理的には無尽蔵である。将来に渡ってもシリコン半導体でシステムを構成する、という立脚点に立てば、半導体も日本も将来は明るくなる。

 

最近、よく使われるビジネス英語で、「resilient」という形容詞がある。弾性的とか跳ね返りが強いとか、というような訳が辞書には載っていると思うが、ビジネスや経済の回復力が速いといった場面で使われる。ここしばらく、米国でも半導体は緩やかに回復していたが、今回のGlobalpressのプログラム状況を見ていて感じたが、米国のシリコンバレーにはResilientという言葉がよく似合う。

 

2013/10/14

LED電球には虫が来ない、虫嫌いに朗報

(2013年7月14日 13:03)

LED電球に新たなボーナスが判明した。蛾などの夜行性の虫がランプに集まってこないことだ。

 

LED電球は消費電力が少なく、寿命が長いと言われている。LED電球はpn接合半導体チップを複数並べて光らせたもの。白熱灯や蛍光灯とは違い半導体であるからこそ、消費電力が小さく、簡単には壊れない。最近ではサンフランシスコ空港をはじめ、国内のコンビニエンスストアなと、さまざまな場所に設置され、家庭でも天井灯も普及してきた。野菜工場では、植物が光を吸収する割合が青と赤の波長光で強く、これまでの蛍光灯の元で野菜を育てるよりも早く育成できることがわかっている。

 

さらに蛾などの夜行性の虫が寄り付きにくいこともわかってきた。実はこの話を、以前、米国のあるブログで見た。ブロガーは、かつて一緒に仕事したことのある、エレクトロニクス技術雑誌EDNTechnical Editor だったMargery Conner(マージョリー・コナー)記者だ。彼女がLEDランプの特長について調べていた時に、何かで見つけたらしい。

LEDramp.jpg

 

そこで、我が家でもLED電球を敢えて、虫の来やすい玄関の外灯に使ってみた。あれから、もう1年以上すぎた。確かに蛾は来ない。LEDの白色光の波長に寄ってこないのかもしれない。これまでは外灯を付けるたびに虫が寄ってきて家の中に入ろうとして、虫嫌いの妻は悲鳴を上げていた。

 

夏でも冬でも蛾は来ない。玄関の外灯を付けていても蛾は寄ってこない。なぜかはまだわからないが、LEDのメリットの一つになったといえそうだ。

 

LEDランプは、一般に青色LEDに黄色の蛍光塗料を塗って白色に変えている。赤、緑、青の3色のLEDチップを使っている訳ではない。一部にはそのようなぜいたくなランプもあるようだが、一般には青色チップだけだ。黄色は、赤と緑の合成になるため、実質的に青と黄色は、青・赤・緑を足した色と同じ白色になる。これが定性的な理解である。

 

青は450nm前後と言われ、黄色は570~585nmであるから、白色LEDの波長は、黄色の蛍光塗料と青色LEDからの光が白色LEDから発せられている。

 

LEDランプは少なくとも黄色の蛍光塗料の波長と、青色のLED波長からなるため、可視光と言っても波長の範囲は狭い。白熱ランプよりも波長の範囲はずっと狭いはずだ。450nmの色と570~585nmの色に蛾が集まってこないということは、蛾の好きな波長は白色光以外かもしれない。

 

少なくとも蛍光灯を点けるとすぐ蛾がやってくる。ということは、白色光よりも短波長の紫外線に近い波長を蛾は好むのかもしれない。蛾などの虫を集めては放電で殺す青色の蛍光灯のようなランプを店先で見かけるが、あの波長は蛍光灯よりもさらに青い色なので紫外光領域も含んでいるはずだ。LEDランプには紫外光が出ていないために虫がやってこないのではないだろうか。

2013/07/14

監視カメラが犯罪防止や犯人逮捕に威力を発揮

(2013年4月23日 22:55)

ボストンの爆発事件が起きた時、米国カリフォルニア州のサンタクルーズにいた。テレビでは、この事件を連日報道していた。犯人が逃走した後の経緯などについても詳細な報道が多かった。今回のテロ事件に活躍したのは、監視カメラ(サーベイランス)だ。

serveillance.jpg

 図 監視カメラの応用 出典:Altera

各所に張り巡らされている監視カメラが犯人兄弟を特定した。監視カメラは今回のように犯人逮捕や犯罪防止に役に立つ。また、事故に遭ったり窃盗に出会ったりするような場合には、どちらが正当なのか明白にしてくれる。

 

帰国前日、サンフランシスコ空港から地下鉄BARTに乗ってサンフランシスコの市内に行ってみた。その車中に監視カメラが4台あり、それらが各車両に配置され、車内の様子を全て見えていることも車内の壁に書かれている。乗客は安心して電車に乗ることができる。逆にこういった監視カメラがない場合には、電車の中では決して油断できない。従来の米国出張では常に緊張していた。危険と背中合わせだった。

 

日本でも最近は犯罪が多発したり、クルマが暴走して突っ込んできたり、昔では考えられない事件が多発している。残忍な殺人事件や凶悪な強盗事件も起きている。安全な街づくりに監視カメラは欲しい。

 

一方、監視カメラを街中に張り巡らせることに反対する意見もある。プライバシが侵される恐れがあると言って反対する。ただ、監視カメラは戸外における個人の行動を記録できるが、個人のプライバシを侵すこととは議論が別ではないだろうか。プライバシは、個人の健康状態や所有するお金、既婚・未婚、年齢など他人に知られたくないことや、裸の姿など見られたくないことを守るための権利である。街の中を堂々と歩くことがなぜプライバシに関係してくるのだろうか。プライバシという権利を必要以上に振りかざしてはいないだろうか。

 

重要なことは、プライバシという言葉の意味をしっかりと噛みしめて考えるというクセを付けることである。街灯や電柱に監視カメラを設置することが本当にプライバシを侵害するだろうか。本当に他人には知られたくないプライバシが、公共の利益が相反する場合にこそ、公共の利益優先か、他人に知られたくないプライバシか、冷静に考えてみる場面になる。街中に監視カメラを設置することが当てはまるだろうか。

 

監視カメラは犯罪防止や犯人逮捕に係わる重要な装置である。公衆道徳や公共の利益と、個人のプライバシの重さを天秤に測って考えてみればよい。そうすると、監視カメラの設置は、プライバシとは関係のないことであることがわかってくる。

 

しかも、誤った意味でプライバシという言葉が使われて、監視カメラの設置が見送られることがありうるとするなら、公共の利益に反することになる。まさに平和ボケ、危機意識の欠如、能天気な街や国になるのではないだろうか。

 

プライバシという意味を本当にわかっている国や地域では、監視カメラはエレクトロニクス産業として大きな市場となり始めている。例えば、全ての交差点の信号上にカメラを設置しておくと、交通事故原因が特定できたり、その事故のメカニズムがわかったりする。保険会社が積極的に設置する国もある。

 

最先端の監視カメラシステムでは、魚眼レンズを用いて可動部分を除去しながら、180度あるいは360度見渡すことができるようになっている。その画像・映像は、歪んだ魚眼画像・映像をカメラの内部回路で修正ししたものになる。そのための画像処理・映像処理プロセッサとそのアルゴリズムの開発が世界中で進んでいる。こういった技術は危機意識の高い国では強い。

2013/04/23

またもや日本人の存在感がない

(2013年4月18日 20:24)

Globalpress主催のElectronics Summit 2013の予定がほぼ終わり、移動日を残すだけになった。最終日はサンタクルーズからサンフランシスコ空港の近くのホテルに移動、1泊する。今回も欧州、米国、アジアの記者と話が出来て有意義だった。

 

いつもこの会議で感じることだが、日本人記者が少ない。欧州からはイタリア、英国、ドイツ、デンマーク、ノルウェイ、ハンガリーなどから参加している。常連も多い。米国ではEE Times.comや、Chip Design/System Level DesignElectronic Products MagazinePower Systems DesignSemiWikiなどの記者が来た。アジアは中国、インド、韓国、台湾からの記者が多い。日本からは私と、元ソニーのプロセス開発エンジニアだった服部毅氏が電子ジャーナルの記者として参加した。

 

日本人記者が海外取材する場合は、International CESなどの展示会や IEDMISSCC などの学会発表が多い。発表資料はふんだんにあるため、英語を聞きとれなくても十分な資料があるため記事は書ける。展示会は製品や試作品を見るだけの取材も多い。資料がたっぷりあり、読めばわかる。ビデオで内容を収めることもできる。

 

ところが、記者会見となると日本人の参加者はぐっと減る。このGlobalpress の会議は記者会見の寄せ集めのような会である。記者は当然質問するし、 Q&A 

E-summit131 030.JPG

のやり取りも多い。2月にスペインのバルセロナで行われたMobile World Congressの際も、STマイクロエレクトロニクスが記者会見を開いたが、私以外の日本人は誰も出席していなかった。フランスとイタリアの企業同士が一緒になって生まれたSTマイクロは、共通言語は英語である。その記者会見でも英語で行った。

 

今回のGlobalpress主催のE-Summit 2013では、英語を母国語としない記者が多いため、どの国のプレゼンタも英語を理解しようと努めてくれる。大変ありがたい。私もあまり英語が上手ではない。プレゼンタによってはゆっくり話してくれる人がいるかと思えば、速すぎる人もいる。ただし、英語を母国語としない記者が多いため、早口のプレゼンは不利である。理解が追いつかない恐れがあるためだ。記者が理解すれば記事は書かれやすい。プレゼンする企業側にとっては書いてもらいたい方が得のはずだ。

 

断わっておくが、このE-Summitでは、書けというオブリゲーションはない。提灯記事を書く義務は全くない。にもかかわらず、参加する記者にはE-チケットとホテルの予約をしてくれ、記者側の費用負担はほとんどない。私のようなフリーの記者にとってはたいへんありがたい。

 

話は逸れたが、これまでのニュースに出たことのない話であれば、記者ならみんな自然に書く。しかし以前聞いた話と同じようなら誰も書かない。企業側はできるだけ新しいニュースを持ってやってくる。例えば、米国のエレクトロニクス産業でいつもクリアなメッセージを送るメンターグラフィックスのウォーリー・ラインズCEOの話は、いつ聞いても新鮮で面白い切り口の話をしてくれる。

 

エレクトロニクスでは、CPURAMROM、インターフェース、周辺回路、ストレージという基本ブロックからなるシステムを「組み込みシステム」と呼ぶ。スマホやデジカメ、テレビ、カーナビ、DVDプレイヤーなどデジタル家電と称する機器は全てこのコンピュータと同じ基本構成で出来ている。ROMに焼き付けるソフトウエアと、周辺回路のハードウエアで違いを出す。半導体回路も同じだ。ソフトウエアと周辺回路ハードウエアの両方が機器の決め手となる。ところが、ソフト技術者とハード技術者は互いに話がかみ合わない。互いにうまくいかない原因を押しつけ合うこともある。こういった対立に目を付け、互いに理解しやすい開発ツールをメンターが開発した。ウォーリーの話は、ユーモアにあふれ、問題点を理解しやすい形でプレゼンする。社内でも賢い(Smart)という声を複数の方から聞く。プレゼンの英語はとても聞きやすい。

 

ただ、こういった場に日本人記者が来ないことはとても残念だ。英語の問題はあるが、中国や韓国の記者の英語は正直言ってうまくない。でも話そうとする意欲はあり、理解に努める姿勢は素晴らしい。いろいろな国の記者と下手な英語で話をすると、彼らの文化を肌で感じることが多く、記事を書く背景として文化や習慣を知ることはとても重要である。ビジネスの違いは文化や習慣から来ることも多いため、このような背景を知っているか知らないかで記事に深みが違ってくる。もっといろいろな媒体から、この総合記者会見に出てくれれば日本の記者のレベルアップにもつながるだろう。欧米の記者からB2Bメディアの在り方を学ぶチャンスでもある。

2013/04/18

社員のクビを切らない企業が伸びている

(2013年4月16日 21:05)

1年ぶりにカリフォルニア州サンタクルーズにやってきた。欧州、米国、アジアの記者同士で、インテル、TSMC、サムスン、ルネサスなど情報交換するのは楽しい。海外ではルネサスを評価する声は多い。技術力だけではなく、会社の風土に対しても、いい会社だという声が強い。欧州の記者からも外国ファンドのKKRに買われなくて良かったという声を聞いた。ルネサス人よ、もっと自信を持とうではないか。

 

ただし、経営陣の心もとなさが引っかかる。知り合いの女性のご主人がルネサスアメリカに勤めていたが、アメリカオフィスを閉鎖するため解雇された。ルネサスはこれからグローバルに出て行きグローバル市場での売り上げを伸ばす予定ではなかったか。それなのになぜ海外のオフィスを閉鎖したり、海外売り上げがこれから見込めるルネサスモバイルを手放すのであろうか。海外のオフィスを閉鎖するのは国内よりも簡単だからという理由だけでそうしていないだろうか。

 

DSCN1854.JPG

これからの将来、何で稼ごうとしているのか、ルネサスの経営陣は答えを出してくれているだろうか。対外的にだけではなく、社内的にも従業員は理解しているだろうか。少なくともルネサスの経営陣からは何も聞こえてこない。

 

社員が十分、理解していれば納得できるが、そうでなければリストラ=首切りしかやっていなければ誰もがやる気を失う。関西のp社は10年以上リストラとコストカットしかなってこなかったという話を、Ex-p社の方からよく聞く。これでは社員のやる気は全く出てこない。会社がこれからどういう方向に向かっていくのか、という道筋は社員のために必要である。

 

今来ているサンタクルーズから近いシリコンバレーでは80年代がそうだった。コストカットのためにクビを切った結果、残された社員のモチベーションがガクっと下がった。誰しもが、「次は俺かの番か」と思うからだ。そうなると、残された社員は次の職探しに熱を入れる。会社の仕事どころではない。仕事はそっちのけにしても自分の新しい仕事場を見つけることに奔走する。こうなるとその企業の活力はガクんと落ちるのは当たり前だ。

 

関西のp社が行ってきたことはまさにそうだった。これではエンジニアはまともな仕事にならない。だから業績が落ち続けてきたのである。

 

最近のシリコンバレーや活力のある地域では、簡単にリストラ(クビ切り)はしない。80年代に経営者が学んできたからだ。同時に、優秀な人を採用することが非常に大変であることもよくわかっているからだ。優秀な人を採るためのリクルーティング活動には一人当たり200~300万円はかかる。

 

リーマンショックを経験したこちらの企業の一つ、リニアテクノロジーのボブ・スワンソン会長に聞いたら、「リーマンショックで売り上げがガクんと落ちたが、一人の首も切らなかった」と誇らしげに言った。リストラしないことが企業の自慢になっているのである。その会長に貴重なアナログの専門技術者をどうやって採用するのか、聞いたことがある。もちろん大学へ出向くことが多いが、もし見つけたらかなり優遇する条件を提示する。仮に東海岸のボストンで見つけてもそのアナログエンジニアが本社のあるシリコンバレーには行きたくない、と言ったならばボストンにデザインセンターを設立する、という。

 

ここでは優秀な人であれば、国籍や性別などでは決して差別しない。シリコンバレーのハイテク企業100社のCEOにアンケート調査をしたSGLグループによると、ハイテク企業に勤める社員の国籍は、アメリカ人と非アメリカ人の割合が50%50%であった。ここに働く男女の比率についても聞いてみると、やはり50%50%だった。シリコンバレーでは差別していると優秀な人を採れない。むしろ、優秀ならば誰でもよいという訳だ。

 

こちらに来る前に銀ナノワイヤーを製品化しているカンブリオス社のCEOになぜ、シリコンバレーで創業したのかを聞いてみた。彼らはボストンにあるMIT(マサチューセッツ工科大学)とUCサンタバーバラ校(南カリフォルニアでロサンゼルスから200km程度離れた場所)で開発された技術をベースにしたベンチャー企業だ。なぜ、わざわざシリコンバレーにやってきたのか聞いてみた。やはり優秀な人がたくさんいて、採用出来ると同時にベンチャーキャピタリストも多いからだと答えた。起業するために優秀な人材は欠かせない。反面、離職率も高い。しかし給料だけで転職する人は少ない。自分を認めてくれるところ、実力を出させてくれるところへ移る傾向が高い。

 

フェイスブックの創業者、ザッカーバーグ氏もボストンのハーバード大学出身だが、起業はシリコンバレーで行った。今や電気自動車のメジャーなメーカーになったテスラモーターズもシリコンバレーで創業した。ここはもはやシリコンだけではない。シリコンの周りにある産業全てが集まっている。

MWC番外編~バルセロナ取材ぶらぶら歩き;スリ、電車、新会場

(2013年3月12日 19:48)

223()に成田を出発し、33日にスペイン バルセロナから帰国した。今回は行きのフライトでも帰りのフライトでも「卒業旅行」の若い人たちでいっぱいだった。行きのフライトはアムステルダム経由だったので、まずオランダに行きイタリア・フランスを旅行するというグループに会った。彼らの無邪気な声を聞いていると降りるときに思わず「旅行中、気を付けて」と言わずにいられなかった。

 

ところが我々(もう一人の仲間と一緒)がスリの被害に会いそうになった。バルセロナ空港から電車で地下鉄が交差するサンツ駅に到着すると、客席に座っていた1組の男女が突然立ち上がり入口のドアの方向に向かった。地下鉄は止まってから自分でボタンを押して開けなければならないため、最初に私がボタンを押して降りて仲間を待っていたところ、ドアが閉まった。どうしたのだろう、と思い、駆け寄ると再びドアが開き彼が出てきた。話を聞くと、男女の内の男がドアを閉め、女が彼のポケットに手を入れようとしたという。手を振り払っていると他の乗客もおかしいと思い始めやむなくドアを開けた。もし一人だったら被害に遭っていた恐れがあった。

 

バルセロナにはスリが多いと聞いてはいたが、これほど身近にいたとは。そういえば2年前に来た時に、車いすに乗った年配の男ともう2人の男がグルになり、わずかに坂になっているカタルーニャ広場で車いすをわざと押して手を離し、いかにも地方から出てきたような若者2~3人にぶつけたふるまいを目撃した。若者たちは男たちには係わらずに無視しで歩き去った。こんな時に温情をかけたら大変なことになる。

Preview 018.JPG

カタルーニャ広場からリシュー駅に向かう繁華街 

今回の仕事は、あるクライアントからMWCMobile World Congress)の会場を一緒に回って、製品や技術の説明を聞き不明な点を質問するというものだ。回った企業を取材してもよい。まるで旅行のアテンダントであると同時に記者でもあった。このため記者として事前に登録すると、取材しないか、という案内を山のようにいただく。ただ、面白いことに日本のメーカーからはほとんどお呼びがかからない。その多くが海外のベンチャー企業である。彼らは画期的な技術を持っているはず。でなければベンチャーキャピタルがお金を出さないからだ。こういった無名の企業を取材することが最高に面白い。日本のメディアはほとんどやってこないからだ。

 

MWCが開催されている間は、欧州域内からバルセロナ行きと、バルセロナ発欧州域内のフライトは満員だ。今年もご多分に漏れずアムステルダムからバルセロナ行きのフライトは満員だった。ただし、日本人旅行客はほとんどいない。フライトチケットは繁忙期に入るため高くなる。しかし、あまり高価な卒業旅行の企画は日本の旅行会社としては立てられない。このためバルセロナへはMWC参加者が帰る頃に入るか、参加者が向かう頃に出るかしかない。いずれの場合も、この前後の期間のフライトはいっぱいになる。

 

バルセロナ市内のホテルはこの期間、価格が非常に高くなる。23倍はざらだ。東京でいえば山手線内の便利な所は非常に高い。このため郊外の安いホテルに泊まり50~60分かけてMWC会場まで「通勤」した。通勤には路面電車と地下鉄を乗り継いだ。電車の切符は、10回乗れるという日本の鉄道にはないチケットが9.8ユーロ(約1100円)と安い。1回乗ると切符の裏に乗車記録が印字され、あと何回乗れるかがわかる。路面電車と地下鉄の乗り継ぎの場合は、1時間15分以内に乗り換えると1回分の料金で乗り継ぐことができる。使い勝手は良い。

 

今年は、電鉄会社の労働者のストライキはなく、電車を有効に使うことができた。MWCの会場が今年から変わった。これまではオリンピックの開かれたモンジュイックの丘の下に設けられた会場だった。この会場の広さ(展示スペース)は16万平方メートルだったが、これでも手狭だということで新会場に移った。新会場は、従来会場のあったエスパーニャ駅から三つ目に新たにEuropa Firaという駅を新設したところに設けた。新会場の展示スペースは20万平米となった。ちなみに日本の幕張メッセはホール 1~8 5.4万平米、ホール9~111.8万平米しかなく、合計しても72000平米しかない。世界にはバルセロナに限らず、20万平米クラスの見本市会場はミュンヘンやハノーバなどにもある。上海の見本市はドイツを模した以上の大きさを誇る。

 

MWC開催の前日224日の日曜日は会場でレジストレーションとクライアントのホテルの下見。夕方からはメディア向けの催し物が2件ある。バルセロナで一番の繁華街であるカタルーニャ広場に向かい、広場から10分程度歩いたリシュー駅のそばで開かれた一つ目のShowStoppersに参加した。劇場の一部を会場として30社程度が小さなブースを出し、軽食・飲み物を取りながら取材するという前夜祭イベントである。MWCの出展料が高いため、このイベントしか出ないという企業もあった。ここでディスプレイ付きのモバイルルーターや、アプリを簡単に作れるソフト、新しいワイヤレス充電器、iPhone用防水カバーなど小物新製品や技術が展示された。この後もう1件の前夜祭であるMobileFocusにも参加した。ここでも同様なブースが出ていた。出展社もこの二つのイベントを掛け持ちしている所もあり、遅れてやってきていた。

Preview 037.JPG

MWC前日のレジストレーションにこの行列

そして、25日月曜日からMWCが始まった。

23日土曜日にバルセロナのMWCへ向け出発

(2013年2月19日 08:25)

今年も225~28日にスペインのバルセロナで開かれるMobile World Congress MWC)に参加することになった。あるクライアント企業からの技術説明アテンダントとしての参加である。さまざまな出展企業が展示する製品やサービスについてそれらのブースの説明員の話を伺い、それを日本語で紹介するという仕事である。技術ジャーナリストだからわかりやすく説明し、広い分野の知識があると見込まれたのだろう。もちろん、取材も行う。

 

Balcerona.jpg

今回、バルセロナでの会場は新しくなる。従来のエスパーニャ広場駅近くの展示会場はもはや手狭になり過ぎたためだ。MWCはスマホやタブレットなどの携帯機器の展示会ではない。もともとGSM Congressが発展した展示会であるため、通信オペレータ(キャリアともいう)がみんな集まる展示会である。このためオペレータへ納入するネットワーク・通信機器や、機器に使う半導体を展示したり、サービスや変わった材料も登場したりする展示会である。なにせ入場料が展示会だけで7万円もする。基調講演などのセミナーも聴講するなら10万円を超す。

 

あくまでもB2Bの展示会ゆえにここに集まってくるのは、機器メーカー、オペレータ、半導体メーカー、アプリケーションソフトメーカー、材料メーカー、サービスベンダーなどだ。しかし、報道陣がこの展示会から書く記事はいつもスマホやタブレットである。素人でもわかりやすいからだ。

 

今回は、やはりオペレータが通信ネットワークにおけるトラフィックをいかにして緩和するか、あの手この手の技術や手法が登場する。もう一つ大事な動きは、オペレータはドカン屋ではないという存在感を示すことである。今やアップルやグーグルは、オペレータが設置した通信ネットワークの上でサービスを提供し、代金はオペレータを通じて回収するというビジネスモデルを確立したOTTOver the Top)である。無料のアプリのダウンロードなどで通信ネットワークをOTT企業は利用し続けている。オペレータはネットワークを敷設するだけのドカン屋ではないことを示す必要がある。

 

海外のオペレータは、RCSRich Communication Suites)として、通信契約するとオペレータが無料のアプリに相当するソフトウエアを無料で提供する。昨年のMWCでこの動きが見られた。オペレータ自らがOTTに負けないような無料のアプリをサービスし、自ら課金システムを利用する仕組みである。国内でも先日KDDINTTドコモ、ソフトバンクらもこういったアプリを提供することが新聞で伝えられた。

 

この展示会に出展する半導体メーカーには、クアルコムやインテル、NXPnVidia、サムスンなど、世界の勝ち組が集まる。日本の半導体メーカーとしては、ルネサスエレクトロニクスとノキアとの合弁会社であるルネサスモバイルと、富士通セミコンダクターが出展する。

 

ルネサスモバイルは、LTEモデムチップのデザインインとして海外からの受注の方が国内からよりも圧倒的に多く、70~80%にも達する文字通りグローバル企業だ。川崎郁也社長によると、フィンランド、インド、日本、英国、米国とグローバルな拠点で仕事をしており、社内の公用語は英語だという。フィンランドやインド、日本、と英語を母国語としない国の社員が圧倒的に多い企業であり、だからこそ世界の標準語である英語でコミュニケーションをとっている。

 

MWC2013にジャーナリストとして登録して以来、世界中の企業から取材要求を受けている。その数の多さに圧倒され、どこまで対応できるかいささか自信がない。しかし、オペレータ、アプリケーションソフト、半導体、通信機器、ネットワークシステムなどさまざまな業界を一通りは取材する予定だ。昨年は直前まで市内の交通機関がストライキに入り、交通手段が使えるのか開幕されるまで不安であったが、今年は今のところそのような動きはなさそうだ。ただ、フライトチケットの関係上、早めに現地入りするので予習はできそうだ。

 

進歩するための二つの言葉

(2012年10月 3日 21:59)

8月に米国のソフトウエアベースの計測器や組み込み設計システムを開発しているNational Instruments社主催のNIWeekへ行って、書き足らないことがまだある。プレゼンが始まる前にスクリーンに流れるいくつかの言葉の中には、今の日本に役に立つものが多い。印象に残った二つの言葉を紹介しよう。

 

学ぶことをやめる者は年寄りだ。たとえ20歳であろうと、80歳であろうと

 人生いくつになっても学ぶという姿勢が大事なのである。以前NHKテレビで見たのだが、92歳のお年寄りの脳が成長していることが見出されたという。その方は、90歳になってから中国語の勉強を始め、学ぶことが楽しくて仕方ないと語っていた。

 

脳内にあるニューラルネットワークの神経細胞のつながりは、脳を使わなかったり、酒を飲んだりすると確実に切れていくと言われている。酒は飲んでも翌日また頭を使って仕事をすれば神経細胞はつながるため、若いうちの脳は退化しないように見える。ただ、その生活を60歳~70歳になってあまり脳を使わない生活を送っている状態で酒を飲み続けていると退化する恐れが十分ある。

 

酒はともかく、脳を使うというか、常に学ぶことをしていると新しいアイデアが次々と沸いてくることは確かだ。とかく若い柔軟な頭脳の時に勉強すればその勉強が身につくと言われるが、歳とは関係ないだろう。日本航空を立て直した稲盛和夫さんは今年80歳だ。日航の問題を把握し、解決案を考えさせると同時に的確な指示を与えてきた。考え、学ぶことができた。実際には大変お疲れになられたことだろう。

 

逆に若者が考え、学ぶことをやめたら、絶対に年寄りには勝てない。そのような若者だらけになったら国は衰退していく。若者の特権はやはり体力である。体力にモノを言わせて年寄りに負けないほど一所懸命勉強し、アタマを使って常に考える習慣を身につければ年寄りには勝てる。次の日本をリードできるのはやはり若者だ。学ぶことをやめたら年寄りだという言葉は真実をついている。



リスクを採らないというリスクほど大きなリスクはない

 リスクを採らないように採らないようにとして穏便に済ませようとすればするほど、それが積み重なっていけば大きなリスクになってしまうという意味である。問題を先送りすればするほど次第に経費がかかったり、却ってリスクが高まったりする。特に、日本の官僚機構、大企業の仕組みなど、出世した者ほどリスクを採らずに先延ばしにしようとする傾向が強い。2~3年で任期を全うすれば手厚い退職金や年金が待っているからだ。官僚や経営陣はリスクを採らない方が得する仕組みになっているのである。ここにメスを入れなければいつまでたっても借金は膨大になり、子や孫の世代が借金を払うことになる。払えなければ国家や会社は倒産の危機を迎える。

 

会社の方が国よりもまだましだ。資金を提供した銀行や株主が黙っていない仕組みを持っているからだ。今の日本国家にはそれがない。それでも、あとになってリスクを採らなかったばかりに現状の経営が悪化しどうにも手をつけられなくなった時のリスクの方がよほど大きい。売却したい部門は安く買いたたかれる。残った部門でさえも足元を見られ買いたたかれる。日本の借金である国債の問題も実はこういったリスクを負っている。

 

リスクは資金が豊富にあるうちに評価し、リスクを見込んだ原価計算をし直し、万が一のことがあっても組織を維持できるように正しい評価と計算をしておく必要がある。例えば、原子力エネルギーは安いという宣伝文句が嘘であることが3.11でわかった。安全を確保するための技術を使い、リダンダンシー(冗長構成)や誤り訂正技術、フォールトトレラントなどを駆使し、万が一の場合に備えて保険を強固にすると、実は決して安くはない。

 

IBMが環境対策に資金を投入し、工場内から有毒物や外のありそうな物質を絶対に出さないという方針で工場管理をしていた、という話をIBMの方から聞いたことがある。なぜコストのかかる環境対策にそれほど一所懸命になるのか、伺った。IBMは有毒物を工場外に出してしまった時のリスクを考慮したコスト計算を行っていた。そのリスクは、場合によっては会社の存続にかかわるリスクかもしれない。それよりも環境対策を万全にして有害物を工場敷地から出さない、ということにコストを費やす方が結局は安くなる、ということだ。

 

残念ながらわが国の原発の安全対策は不十分であり、今回被害に遭われた方々に対する補償なども原価計算に含める必要がある。これがリスクを採る安全対策になる。つまり、リスクを含めた原価計算をしなければ企業として存続できないはずなのである。それ抜きでコストを出すことには全く意味がないのである。このように計算し直すと、原子力の1kW当たりの電力はこれまでの計算値よりもずっと高くなるはずだ。それを国民に示すべきであり、それがないからいつまでたっても政府・行政不信になる。

 

リスクを採らないビジネスというものは本質的にあり得ない。ベンチャーを起業するリスク、企業を存続させるためのリスク、何にでもリスクはある。リスクを考えずに何かを事業を起こしてトラブルに見舞われると想定外という言葉で逃げる。リスクがあるからと言って問題を先送りしてはいつまでたっても解決しない。問題を先送りすることを英語で、Japanize(ジャパナイズ)というらしい。日本政府のやり方を指した皮肉である。

(2012/10/03)

10月13日から1週間、米国行き

(2012年9月23日 20:41)

次の海外出張では、1015~19日、GlobalPress Connection主催EuroAsia Pressセミナーに出席する。このセミナーは、さまざまな企業の講演やデモがあり、日本にいては聞けないような話が山のようにある。中には、企業を訪問し、半日の説明やデモなどを見せていただくこともある。魅力的なことは、日本に現地法人のない、ちっぽけなベンチャーの話がきけることだ。また、日本に現地法人があっても本社のCEOCTOから直接、話を聞けることもメリットだ。11のインタビューも可である。

 

米国のベンチャー企業は、すごい技術を持っている所が多い。というのは、1歩先んじた技術を持っていなければベンチャーキャピタル(VC)は出資してくれないからだ。最初の出資である程度、成功の道筋が描かれるかどうかを確認、調査し、うまくいきそうになると、最初のVC(エンジェルともいう)はさらに追加投資を行うと同時に、別のVCや業界企業を紹介し、彼らからも出資してもらう。だから、2回目、3回目の資金調達となるといよいよ製品の試作が始まると同時に、潜在顧客にもアプローチし始める。複数のVCから資金を調達できれば、そのベンチャー企業の成功確率は高まる。われわれジャーナリストにとっては、日本でまだ誰も報じていない企業のすごい技術の話はまさにテクノロジーの特ダネとなる。

 

また、日本の現地法人があっても、CEOの生の声を聞けることは別の情報を仕入れることに等しい。例えば、2年前のGlobalpressのコンファレンスにおいて、元ザイリンクスのシニアVP(バイスプレジデント)からMIPS TechnologyCEOになった、Sandeep Vij氏のスピーチは、極めて印象的だった。スタンフォード大学の現在学長であるヘネシー教授のもとでRISCコンピュータの開発をやってきた彼は、MIPSで再びRISCに係わりを持つようになったと喜びのメッセージを発した。こういった生の声を聞けるのである。

 

シリコンバレーのミルピータスにあるリニア・テクノロジー本社を訪問して、たくさんの新製品のプレゼンを聞くこともあった。リニアは高性能ながら汎用の製品を設計製造することが上手な企業で、製品の価格は少々高いが、性能を得るためあるいはシステムコストを下げるためには購入せざるを得ないものが多い。夜になると、リニアの招待で街の中華レストランへ行き、シニアエンジニアの方たちと日本、欧州、米国、アジアなどさまざまな顧客との付き合いやビジネス情報を議論し合うこともある。日本にいてはとてもできないような取材である。

 

さらにシリコンバレーはいまだに新しい情報の宝庫だ。かつてのシリコンバレーはもう半導体はダメだ、これからはナノテクだ、バイオだと言われた時期があった。しかし2000年代に入ってからは転入人口の方が転出人口よりも多くなり、住宅を求める声は再び強くなっている。現実に、電気自動車はデトロイトではなくシリコンバレーから始まり、ソーラー技術もシリコンバレーから起きている。Facebook創業者のザッカーバーグ氏は東海岸ボストンにあるハーバード大学を出てシリコンバレーに本社を構えた。半導体では仮想3FPGA の Tabula 社、MOSトランジスタの電流バラつきを減らせることで低消費電力を実現する Suvolta社など、新発想の半導体技術ベンチャーが現れてきている。

 

ちなみに日本語のベンチャー企業は、英語ではスタートアップ(startup)あるいはStartup companyと言う。ベンチャーと言うと、「あなたの言っていることはベンチャーキャピタルのことか?」と聞き返されることが多いので注意が必要だ。

 

一つの気がかりは、社長のIrmgardからくるTwitterによると、チームのメンバーの一人であるPatriciaが病気になったことだ。E-チケットは頂いたが、サンフランシスコ空港からのロジスティクスに関する情報が全くこなくなった。ブラジル出身のPatriciaは、非常に賢い(smart)働き者の女性であり、Irmgardの良いサポータだ。一刻も早い回復を祈る。

(2012/09/23)

NFCが広がる自動認識展とiPhone5に思う

(2012年9月14日 00:32)

昨日、自動認識展をのぞいてみた。ここでは、NFCNear field communication)のパビリオンが初めて登場した。また、パビリオン以外でもNFCを用いた決済システムをデンソーウェーブが展示するなど、NFC技術の広がりを強く感じた。

 

NFCは日本のFelicaと同じではないか、という声をよく聞く。実際、私もしばらく前まではそのように思っていた。しかし、NFCを取材して感じたことは、NFCは標準化された基本技術だが、Felicaは専用技術だということが最大の違いであり、日本にとって最大の問題である。つまり、IDや認証システム、決済システムなどを手ごろな価格で提供できないという問題が日本にはある。日本は相変わらず独自仕様のため高価で、世界には普及しないものを作っていることがここでも当てはまる。

 

Felica技術は、大きく分けてRF+モデム回路(ワイヤレス技術の基本)とセキュリティ回路からなる。NFCは前者と後者を分け、前者を標準化し、さらに後者のインターフェース部分も標準化したものだ。分けることによって、これまでカードにしか使えなかったFelicaの応用を携帯電話機やスマートフォン、タブレット、パソコンなど電子機器なら何にでも使えるようにした。専用部分はセキュリティ回路のセキュリティ部分だけだ。応用ごとにここだけソフトなどを書き直したりハードを追加したりすれば、応用範囲は格段に広がってくる。

 

NFCは、電子マネーの決済や交通の乗車券や航空券、入退室管理などセキュリティに係わる所だけをしっかり守ることで、世界中で使える規格となってきた。クレジットカードの延長として今後はNFCカードが世界中で使えるようになる日はそう遠くない。かつて、クレジットカードはお店でカード番号を写していた。そのうち、エンボスカードとなって、凸凹の部分を機械的にガシャガシャとスキャンすることで間違いなく番号を入力できるようになった。今は、カードリーダーによって決済機関およびカード会社の認証をとることで、数秒で確認できるようになった。NFCが金融、カード業界に普及すれば、スマホでどの店もカードを読み取るだけで決済できるようになる。私たちが気がつかないうちにスムースにそのように移行するだろう。

 

NFCの登場によって、スマホにも入るようになり、これまでの単純なお財布ケータイだけではなく、スマホが読み取り機・書き込み機(リーダー・ライター)になる。これまでのお財布ケータイは読み取られるだけのタグの役割しかなかった。ところが、スマホにはディスプレイもキーボードもある。タグだけに使うのはもったいない。リーダー・ライターとして使えれば用途は格段に広がる。NFCがすでにスマホに入った機種は50以上になるという。専用のカードリーダーは数1000台しかなかったが、スマホにNFCが入るようになり数十万を超えるカードリーダー・ライターの台数が世界中に普及していることになる。

 

iPhone5でがっかりしたのはNFCが入っていなかったこと。もともとアップルはNFC Forumのメンバーに入っていないため、iPhoneNFC認証されたチップが入ることはないだろうと思ってはいた。しかし、アップルのことだから、何かサプライズがあるかもしれないとiPhone5に期待した。結果は皆さんも知っての通りだ。残念に思う。アプリケーションプロセッサがA6になり、LTEが使え、画面サイズが少し大きくなり薄くなっただけだと、さほど代わり栄えはしない。これまでにもアンドロイドで似たような機種はある。アップルへのワクワク感が今回は裏切られた。

(2012/09/14)