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NEWS&CHIPS|国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト、メディアコンサルタント津田建二の事業内容~技術・科学分野の取材・執筆(国際技術ジャーナリスト)

 

東芝は危機を乗り切れるか
2015年12月30日 20:48

東芝が危ない。1229日付けの日本経済新聞が3000億円の追加融資を要請するという記事を掲載した。不適切会計処理問題から発展した、東芝の信用はがた落ちでその株価は25日に最低の216円まで下がった。29日には反発し232円まで上がったが、4月ごろまでは500円前後を推移していた。追加融資を期待して株価が少し反発したのであろう。

 

東芝がなぜ危ないか。経営者の問題が取り上げられてきたが、実は社員の意識も悪い。いわば危機感がなく、『絶対につぶれない』と慢心しているからだ。ある媒体で、日経のニュースをまとめ、分析・解説するコラムを担当しているが、1024日に日経に掲載された「東芝、ソニーに事業売却 画像用半導体、200億円で」という記事をそのまま伝えたところ、「この時期になぜこのような記事の配信なのか、わかりません??? 従業員は何も知らされていない中で先に報道が走っており、わざわざ従業員の不安を掻き立てるような記事の配信は今すべきではないのではないでしょうか!!」という意見をもらった。翌日、自分の書いたコメントを取り消す意見が送られてきたが。

 

つまり、東芝の従業員が東芝問題を見ようとしない姿勢に問題があるのだ。不安をあおるのではなく、真実はどこにあるのか、を知らなければ、その先の正確な判断ができない。日経が報じた記事を紹介しただけなのに、これほどまでに敏感にはなっている。しかし、東芝のどこに問題があり、社員はどうすべきか、ということも知らないようだ。

 

元々東芝は、のんきな社員の多い会社だった。技術開発力は高く、賢い(スマート)エンジニアも多かった。三井財閥の伝統的な「おぼっちゃま体質」と世間では、言われていた。だから、利益を求められても利益を生み出す手法を知らない。そのために帳簿をごまかすことはもってのほかだ。経営者がもちろん悪いのではあるが、社員も危機感が乏しい。IT大手のシスコシステムをはじめとする米国の経営者(社長やCEO)には安売りのエコノミーチケットで海外出張する人たちが多いが、お金の有効利用という視点でその事実をブログで紹介したら、「そんなケチな会社にいたら、ケチくさい人間になってしまう」というコメントをいただいた。東芝出身者だった。

 

私は東芝をけなすつもりは決してない。むしろ立ち直ってほしいからこそ、テーマとして採り上げた。今回の事件は経営者の責任が大きいが、経営者だけの責任にすると、僕は悪くない、と社員は思ってしまう。危機感ゼロこそ、会社をつぶす元になる。会社は若い社員が頑張らないと業績は上がらないからだ。だからこそ経営者は社員を鼓舞する義務がある。社員のやる気をどう引き出せるかが経営者の手腕である。かつて経営危機に陥った日産自動車の問題も結局はそこにあった。当時の社員に危機感はなく、自分の部門が赤字でも「他が黒字にしてくれるから」という無責任な意識で仕事していた。カルロス・ゴーン氏が立て直したのは社員の意識改革だった。東芝も同様な意識改革が必要だと思う。

 

東芝に限らない余談だが、仕事で海外に行くならビジネスクラスだが、プライベートで海外に行く場合にはエコノミーを使う人たちがいるが、このような意識こそ会社や役所を食い物にしているのではないだろうか。仕事でもプライベートでも自分はビジネスでなければ嫌だというのであればよいが、プライベートでエコノミーに乗るなら仕事でもそうすべきであろう。これは会社や役所にとっての無駄遣いになる。

 

東芝問題の解決しにくい一面には、内部の力関係も絡んでいる。2014年度の業績を見ると、半導体を含む電子デバイスが17688億円の売り上げで2166億円の営業黒字であるのに対し、テレビやパソコンなどの民生部門は売り上げ11637億円で1097億円という巨額の営業赤字となっており、全社売り上げ66559億円で、営業利益1704億円の黒字という業績だった。つまり、半導体が牽引する電子デバイスだけで全社の黒字以上の利益を稼ぎだしている。にもかかわらず、半導体出身の室町社長は半導体部門のリストラを始め、赤字を垂れ流す民生のリストラを後回しにしている。

 

これだけの事実でも、東芝社長がいかに民生部門に遠慮しているかを物語っている。テレビやパソコン、携帯電話などはとっくに韓国勢に抜かれ、今や中国勢にも抜かれている。韓国企業の最大の脅威は中国勢なのだ。液晶テレビやパソコン、携帯電話にはもはや競争力はない。かつて「レグザ」ブランドのテレビ、「ダイナブック」ブランドのパソコンは一世を風靡したが、すでに落ち目の製品ジャンル。ここにいつまでもしがみついているからこそ、事業を売るにも買いたたかれることになる。

 

社長が民生部門に遠慮している様子が目に浮かぶようだ。東芝の民生部門がリストラを拒否あるいは先延ばしをしている状況は、危機感ゼロと言うしかない。東芝という企業を経営する役員なら、民生事業部門のトップも社長にリストラを進言すべきであろう。大赤字で、東芝全体の足を引っ張っている民生部門が居直っているとするなら、東芝の回復はますます遅れるどころか、下手をするとつぶれかねない。

 

好調な半導体で不調の製品部門を早めにリストラするにも、東芝というブランドが傷ついてしまった以上、高くは売れないのである。幸いにも、アップルに促されて増産しなければならないソニーは、設備投資するよりは安く済む東芝の工場を買うという選択をしたために買いたたかれは防げたが、これはラッキーというしかない。

 

今回の3000億円という追加融資、すなわち借金は、日経によると今期のリストラ費用が2600億円に達することから、これが主な使用目的となりそうだ。リストラと同時に東芝はこれから何に力を注いでいくのか、これまでのような絵に描いた餅ではなく、実行力を伴った戦略を描き、それに基づいた戦術を立て実行していくことが必要だ。後ろ向きの単なるリストラだけでは、企業は成長しない。成長のエンジンを何に求めるのかをもっと明確にしない限り、東芝はますます迷走する。

 

東芝の株価は、問題が発覚した6月よりも前からすでに1割程度落ち、450円程度を動いていた。長期的には2007年には1000円を突破していたが、リーマンショックで250円まで下がった後、500円前後を推移していた。これが4月ごろから下がる一方だった。市場はいち早く気が付いていたのかもしれない。

2015/12/30