日本のスマホ普及率はクロアチア並み46%
2014年11月30日 08:20

日本の新聞では、時々「ポストスマホ」という言葉が散逸されるが、海外を取材している限り、スマートフォンの時代は少なくとも10年は続く。あらゆることがスマホをベースにして起きるからだ。20132月のMobile World Congress (MWC) の基調講演で、ファブレス半導体のトップ企業、クアルコム社の前CEOであったポール・ジェイコブズ氏(1)が「今やスマートフォンがコンピューティングのプラットフォームになったと言ってもいいだろう」と述べたが、その通りに時代は動いている。

 

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コンピューティングのプラットフォームになった、と彼が述べた理由はこうである。「2012年のスマホの出荷台数はパソコンの2倍になった。これからもますます伸びるだろう」。彼の言葉通り、その1年後、2013年のスマホの出荷台数はパソコンの3倍に達した。2014年もスマホの出荷数量は伸び続けており、パソコンの何倍になるのか楽しみだ。

 

日本しか見ていなければ、テクノロジーの大きな流れを見失ってしまう。1~2週間ほど前、グーグルが世界各国の人口当たりのスマホの普及率を発表した(2)。これによると日本のスマホ普及率は46%、とクロアチアと並んでいる。1位のシンガポールは85%2位の韓国は80%3位スウェーデン75%4位香港72%5位スペイン70%となっている。ちなみに英国は68%、米国は57%、ドイツ50%、フランス49%で、日本とクロアチアはフランスの次である。

 

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図2 世界主要国の人口当たりのスマホ普及率 出典:Google Consumer Barometer

日本でスマホはまだ飽和していない。東京では電車内で見かけるスマホが80%以上普及しているように見えるが、地方へ行くと全く様子が違う。いわゆるガラケーさえ持っていない人も多い。ましてやスマホを持っている人は極めて少数派だ。地方ではこれからスマホが普及し始める。ポストスマホと喧伝すると、スマホのビジネス機会を見失い、ビジネス全体を失う恐れがあるから注意を要する。

 

歴史的に見ると、今のスマホは、かつてワープロからパソコンへ移行した1990年代を彷彿とさせる。通話を目的とする携帯電話がワープロに相当し、スマホは汎用のパソコンに匹敵する。アプリというソフトをダウンロードするとスマホに機能を追加できる。パソコンと同じブラウザを見ることができる。検索も容易だ。さらにカメラやビデオが付いており、テレビ電話も標準装備されており、音楽やビデオを再生できる。GPSで目的地に間違いなく到着できる。画面に沿って文字や写真が90度自動的に見やすい方向に回転してくれる。タッチパネル操作はiPhoneから始まった。集合写真を撮る場合のセルフタイマーのシャッタとしてスマホを使うシーンも一般的になった。

 

さらに、10年以上前から、ユビキタス時代とは言っていたものの、パソコンを持ち歩く時代は「いつでもどこでも」インターネットとつながっている訳ではなかった。Wi-Fiなどインターネットの環境があったとしても、必ずどこかに「座る」という行為をしなければ使えなかった。スマホやファブレット、タブレットなどは歩きながらでさえ操作している。カバンを片手に持っていても楽に使える。このようなコンピュータは今までなかった。今まさに、ユビキタス時代になったのである。

 

この先も、汎用リモコンとして使ったり、ヘルスケア端末をBluetooth SmartLow Energyでつなぐハブとなったりする。スマートハウスでは電力量のモニターや各部屋の電化製品のモニターとしても標準となるだろう。調光と制御機能を設けたスマート照明用のモニターとしてのアプリも入手可能だ。ポストスマホではなく、スマホをハブとしてヘルスケアやウェアラブル端末を周辺機器として使われるようになる。スマホがウェアラブル端末にとって代られるのではなく、ウェアラブルのハブになるのである。

 

だからこそ、例えば、スマホやウェアラブルに使うセンサの開発が世界各地で活発になっている。動きや重力を検出する加速度センサ、回転する状況を検出するジャイロセンサ、あらゆる圧力を検出する圧力センサ、地磁気をはじめ微弱な磁力を検出する磁気センサなど、スマホにはMEMSと呼ばれる半導体技術を駆使したセンサが盛りだくさん搭載されている。センサを中央にまとめるセンサハブという機能を実現する半導体チップも登場した。センサからの信号をユーザーエクスペリエンスに変換するアルゴリズムも続々開発されている。ここでもだが、半導体チップとソフトウエアが一緒になった、センサ技術が実用化のキモとなっている。

 

ただし、スマホ用の部品や半導体は世代ごとに代わる恐れがあり、今ビジネスを勝ち取っていても安穏としていられない。逆にまだスマホ部品市場に入れないサプライヤにはビジネスチャンスとなっている。諦めてはいけない。米国の中小ベンチャーは何とかしてスマホ市場に入り込むことを鵜の目鷹の目で狙っている。

                                                    (2014/11/30)