NFCが広がる自動認識展とiPhone5に思う
2012年9月14日 00:32

昨日、自動認識展をのぞいてみた。ここでは、NFCNear field communication)のパビリオンが初めて登場した。また、パビリオン以外でもNFCを用いた決済システムをデンソーウェーブが展示するなど、NFC技術の広がりを強く感じた。

 

NFCは日本のFelicaと同じではないか、という声をよく聞く。実際、私もしばらく前まではそのように思っていた。しかし、NFCを取材して感じたことは、NFCは標準化された基本技術だが、Felicaは専用技術だということが最大の違いであり、日本にとって最大の問題である。つまり、IDや認証システム、決済システムなどを手ごろな価格で提供できないという問題が日本にはある。日本は相変わらず独自仕様のため高価で、世界には普及しないものを作っていることがここでも当てはまる。

 

Felica技術は、大きく分けてRF+モデム回路(ワイヤレス技術の基本)とセキュリティ回路からなる。NFCは前者と後者を分け、前者を標準化し、さらに後者のインターフェース部分も標準化したものだ。分けることによって、これまでカードにしか使えなかったFelicaの応用を携帯電話機やスマートフォン、タブレット、パソコンなど電子機器なら何にでも使えるようにした。専用部分はセキュリティ回路のセキュリティ部分だけだ。応用ごとにここだけソフトなどを書き直したりハードを追加したりすれば、応用範囲は格段に広がってくる。

 

NFCは、電子マネーの決済や交通の乗車券や航空券、入退室管理などセキュリティに係わる所だけをしっかり守ることで、世界中で使える規格となってきた。クレジットカードの延長として今後はNFCカードが世界中で使えるようになる日はそう遠くない。かつて、クレジットカードはお店でカード番号を写していた。そのうち、エンボスカードとなって、凸凹の部分を機械的にガシャガシャとスキャンすることで間違いなく番号を入力できるようになった。今は、カードリーダーによって決済機関およびカード会社の認証をとることで、数秒で確認できるようになった。NFCが金融、カード業界に普及すれば、スマホでどの店もカードを読み取るだけで決済できるようになる。私たちが気がつかないうちにスムースにそのように移行するだろう。

 

NFCの登場によって、スマホにも入るようになり、これまでの単純なお財布ケータイだけではなく、スマホが読み取り機・書き込み機(リーダー・ライター)になる。これまでのお財布ケータイは読み取られるだけのタグの役割しかなかった。ところが、スマホにはディスプレイもキーボードもある。タグだけに使うのはもったいない。リーダー・ライターとして使えれば用途は格段に広がる。NFCがすでにスマホに入った機種は50以上になるという。専用のカードリーダーは数1000台しかなかったが、スマホにNFCが入るようになり数十万を超えるカードリーダー・ライターの台数が世界中に普及していることになる。

 

iPhone5でがっかりしたのはNFCが入っていなかったこと。もともとアップルはNFC Forumのメンバーに入っていないため、iPhoneNFC認証されたチップが入ることはないだろうと思ってはいた。しかし、アップルのことだから、何かサプライズがあるかもしれないとiPhone5に期待した。結果は皆さんも知っての通りだ。残念に思う。アプリケーションプロセッサがA6になり、LTEが使え、画面サイズが少し大きくなり薄くなっただけだと、さほど代わり栄えはしない。これまでにもアンドロイドで似たような機種はある。アップルへのワクワク感が今回は裏切られた。

(2012/09/14)