高周波シミュレータやノイズシミュレータなどの技術者集団、AETが主催するワークショップ「明日を紡ぐIOT(Internet of Things)」(http://www.aetjapan.com/event/workshop.php?AET_WS)で講演することになり、今その準備中だ。IOTという言葉は昨年あたりから米国企業を中心に聞かれるようになった。いわゆるモノにM2M等の通信モジュールやZigBeeモジュールを搭載して、インターネットにつなげてしまおうというもので、何でもインターネットというべき概念だ。
このワークショップの中で私は、センサネットワークについてお話しする。実は、数ヶ月前、センサネットワークについて調べていたら、WikipediaではM2M(machine to machine)のコアとなる技術だとある。これを読んで、あれれ???と思った。M2Mは基本的にはデータ通信モジュールを使ったサービスであり、これをセンサネットワークと呼ぶなら一般的な携帯電話でさえセンサネットワークということになる。携帯電話をセンサと定義すれば3G通信ネットワークもセンサネットワークといえるからだ。
センサネットワークの基本はワイヤレスセンサネットワークである。このワイヤレスという言葉に重きを置き、センサの電源コードもワイヤレスとして考えると、M2Mはワイヤレスセンサネットワークの範疇には入らないことになる。ワイヤレスセンサネットワークに使われるセンサは電池で動作するか、自然エネルギーから電源を取り出すエネルギーハーベスティングか、どちらかしかなくなる。ワイヤレスセンサには3年程度は電池を交換しなくて済むようにしてもらいたいからだ。
そこで、センサの定義から始まり、これまでいわれているセンサネットワークにM2Mも含めるというWikipediaの説明で疑問を感じたことについても再定義しなければならないな、と考えたのである。そこで、センサネットワークをどのような範疇まで広げて再定義するか、その際センサとは何か、を考え整理してみた。この時以来、通信関連のいろいろな方々にセンサネットワークの新しい定義について聞いてきた。最近になって、自信を持って再定義が必要だと感じた。この講演では、その再定義についても吟味してみる。このワークショップでも再定義についてご意見を伺いたいと思っている。
AETが主催するテーマのIOTについて考えると、どのようなモノにもインターネットとつながる時代になる、という前提から出発している。昔のPDAは通信機能がなかったばかりに普及はイマイチだった。iPadやスマートフォンはPDA以上の機能を持ちながら、通信機能もしっかりとい持っている。3GあるいはLTEネットワークの他にWi-Fi通信やBluetoothなどの通信機能も搭載しているからだ。
これからの未来は、カメラにもWi-Fi機能が付き、撮った写真やビデオをすぐにDropboxやYouTubeに載せられるようになる。さらにスマホのWi-Fiと連動すれば、仲間みんなで撮影する場合でもセルフタイマーは不要になり、その代わりにスマホでシャッターを切れるようになる。ICレコーダーに通信機能が付けば、録音した対談や取材が自分のPCやメディア企業のPCやサーバーにも即座に記録できるようになる。犯罪防止や公正な裁判にも活用されるかもしれない。これからは、さまざまなモノに通信機能がつき、インターネットを介して生活をさらに豊かにしてくれる。IOTの時代こそ、モノにIPアドレスを付けるIPv6が生きてくる。AETのワークショップから、私たちの未来の生活を豊かにそして公正・公平な社会作りへのテクノロジーがもっともっと生まれてくることを期待する。
なお、「明日を紡ぐIOT(Internet of Things)」は9月14日に東京・秋葉原のアキバプラザのアキバホールで行われる。
(2012/08/19)